第6回:知識はあるのに「実務経験ゼロ」の壁→ 企業も個人も「即戦力」を求めている

当サイトの一部にアフィリエイト広告を含みます。

1. はじめに:「知識はあるのに仕事が取れない」現実

 資格試験に合格し、知識もばっちり。しかし、いざ仕事を始めようとしたところ、「実績ゼロを理由に仕事が来ない」「未経験だから不採用」といった壁にぶつかる。こんな状況に陥っていないだろうか。

 資格を取得すれば、すぐにでも活躍できると思っていた。こういう人は少なくない。だが、企業やクライアントが求めるのは「資格者」ではなく、「即戦力となる人」なのだ。いくら知識があろうと、実務経験がなければチャンスに恵まれないのはよくある話である。

 特に、独立開業を目指す場合、「資格がある新人」ではなく「実績のあるベテラン」が優先される。では、実務経験ゼロの自分にチャンスはないのかといえば、そんなことはない。当ページでは、実務経験のない状態から抜け出し、仕事を獲得する具体的な方法を解説する。


2. なぜ「実務経験ゼロ」が壁になるのか?

 資格があっても、実務経験がなければ戦力外。仕事を得るのは難しい。

 これらは、企業・個人のどちらにも共通するポイントだが、なぜ、実務経験がないことがこんなにも大きなハードルになるのか。その理由を詳しく見ていこう。

① 企業が「即戦力」を求める理由

 企業が資格者を採用する際、重要視するのは「即戦力となり得るか」だ。企業側の視点に立つと、以下の事情が見えてくる。

研修コストをかけたくない
 新人を一から育成するには、時間もコストもかかる。特に、小規模な事務所や会社の場合、研修にかけられる余裕がなく、即戦力として動ける人材を求める傾向が強い。

仕事の進め方や業界特有の実務を知っている人が優遇される
 どの業界にも、資格試験の知識だけでは対応が難しい実務の流れがある。たとえば、行政書士の場合には、「許認可の申請書類を揃える手順」や「官公署との交渉」など、試験で学ぶことのできない実務的なスキルが求められる。企業では、こうした「現場対応力」を持った人を優先的に採用する傾向が強い。

② 個人のクライアントが「実績のある専門家」を選ぶ理由

 資格者として独立を考えるとき、個人のクライアントを無視することはできない。けれど、多くの場合は「実績のある専門家」に仕事を依頼する。その理由は、以下の通りだ。

「この人に任せて大丈夫か?」という不安がある
 
クライアントは、自分が抱える問題を解決してくれる人を求めている。しかし、実務経験ゼロの人に依頼する場合、「本当にきちんとやってくれるのか」「この人で大丈夫か」という不安が生じる。そのため、多少高額でも経験豊富な専門家を選ぶ人が多い。

「実績ゼロ」と「実績あり」の専門家なら、ほとんどの人が後者を選ぶ
 
ここで一つ、想像してほしい。あなたが行政書士に遺言書作成を依頼する。このとき、報酬額や納期は同条件で、唯一、「実績ゼロの開業1年目」と「豊富な実績をもつ開業10年目」という違いをもつ2人の行政書士から選ぶとしたら、どちらを選ぶだろうか。大半の人は経験豊富な10年選手を選ぶはずだ。なぜなら、同じコストをかけるのならリスクが低い方がいいからである。

③ 知識と実務のギャップがある

 資格試験を通して得る知識と、実務で求められるスキルとは、必ずしも一致しない。両者には大きなギャップが存在し、資格を持っているからといって仕事になるとは限らない。

試験の知識だけでは対応できないケースが多い
 
行政書士の場合、試験科目を民法や行政法が占めるが、実務で求められるのは、どの官公署に、どの書類を、どう提出すればいいかといった実践的な知識だ。このような知識を試験学習で得ることはできない。

実務では応用力や柔軟な対応が求められる
 
クライアントにより状況は異なり、単に知識を詰め込んだだけでは、どのような対応が最適化を判断することはできない。このような判断力を身に着けるには、実務経験によるところが大きいことから、経験不足は仕事に繋がりづらくなる。


3. 「実務経験ゼロ」の人が直面する3つの壁

 資格を取得したものの、実務経験のない人が必ず直面する壁が、「就職・転職」「開業後」「報酬」の3枚だ。これらの壁を乗り越えることができず、資格を活かせないまま終わらせる人もいる。ここでは、各壁について詳しく見ていこう。


① 就職・転職の壁

 資格を取得すれば、企業がすぐに採用してくれるとは限らない。むしろ、実務未経験者にすれば就職や転職の壁は想像以上に分厚く、高い。

「未経験可」の求人は少なく、競争率が高い
 
企業の求人を見たことがある人ならわかるだろうが、「経験者優遇」「即戦力歓迎」などの文言が並ぶ。特に、士業事務所や専門職の企業では、ゼロから育てる余裕がなく、未経験者向けの求人が限られる。そのため、「未経験者歓迎」の枠には漏れなく応募が殺到し、競争率が非常に高くなる。

面接で「なぜ未経験なのか?」「どう即戦力になるのか?」を問われる
 
企業側は、未経験者の採用には特に慎重だ。採用面接において、「なぜ今まで実務経験を積んでいないのか」「未経験でありながら、自社にどう貢献できるか」などの質問をストレートに投げかけてくる。資格があれば優遇されると考えていた人にとっては衝撃的な言葉だろうし、そうでなくとも、こうした質問に明確に応えられなければ採用は難しい。


② 開業後の壁

 資格を取り、企業に採用されないなら独立すればいいと考える人も多い。しかし、開業には開業のハードルが存在し、実績のないあなたを信用してくれる企業・個人は稀少である。

「実績ゼロ=信用ゼロ」で、最初の依頼が来にくい
 
開業直後に最も苦労するのが、最初の案件獲得だ。個人のクライアントの場合、依頼前に「この人は本当に信頼できるか」を熟考する。このとき、判断基準となるのが過去の実績だが、開業直後にまっさらだと不安を招き、依頼を躊躇われるケースも多い。

経験豊富なライバルと比べられてしまう
 
特に資格業に多いのが、すでに豊富な実績を持つライバルとの比較だ。たとえば、10年以上の経験・実績をもつライバルと開業後1か月の自分とでは、ほとんどの場合、敗北する。開業直後にはこのように、多くのライバルとの差別化を意識する必要がある。


③ 報酬の壁

 ここまでの壁を乗り越え、ようやく仕事を得たとしても、最後にもう1枚「報酬の壁」が待ち受けている。実務経験が少ない場合、正当な報酬を受け取りづらいのだ。

「経験がない」ことを理由に安く買い叩かれることも
 
未経験者の場合、とにかく「実績がないこと」が弱みとなり、クライアントから「お試し価格で安く受けてくれませんか」と値下げ交渉をされることがある。特に、クライアントが個人の場合、実績がないなら無料または格安でやってくれて当然と考える人もいるのだ。その結果、適正価格より低く請け負うこととなり、収益化が難しくなるケースもある。

「無料相談」「格安案件」を活用するしかない場合がある
 
開業直後は、実績をつくるために無料相談や格安案件の活用を考える人が多い。確かに、実績を積む手段として有効だが、いつまでも低単価で仕事を受け続ければ、「低価格の専門家」というイメージが定着し、適正な価格で受けられなくなる。特に、SNSや口コミから「この人は無料(または格安)でやってくれる」という意見が広がってしまえば、払拭に長い時間と大きな労力を要する。


4. 「実務経験ゼロ」から抜け出すための戦略

 未経験を理由に仕事がとれず、仕事がとれないために経験が積めないジレンマから抜け出すには、戦略的に動かなければならない。ここでは、未経験者が経験を積み、仕事を掴む4つの方法を紹介する。


① 小さな仕事から経験を積む

 はじめから理想の仕事を追うより、小さくとも経験を積むことを大切にしたい。

副業・アルバイト・業務委託などで経験を得る
 
いきなり正社員や独立開業を目指すのではなく、はじめは副業や業務委託、アルバイトを通じ、実務に触れるのも一つの手段である。行政書士の場合、先輩行政書士の業務を手伝うほか、関連業務のサポートを行う方法が考えられる。

「未経験OK」の案件に積極的に応募する
 
クラウドソーシングや求人サイトを活用し、「未経験OK」「研修あり」などの案件に挑戦するのも有効だ。単価が低くても「実績を積む」目的で、積極的に取り組もう。


② 実績づくりのための「無料・格安案件」活用

 未経験の場合、クライアント不安を抱くことも多いことから、実績づくりが必要だ。そのため、一時的な「無料・格安案件」の活用も手段としては有効である。

最初は「格安」でも、経験を優先して
 
無料、または格安での業務に抵抗を感じる人もいる。しかし、はじめは実績づくりを優先したい。そのため、開業直後は知人の書類作成を無料で手伝う、モニター価格で相談を受けるといった方法を取り入れるのが有効だ。

「無料相談」や「モニター募集」で、実績と口コミを増やす
 
SNSやブログを通して「モニター募集」をかけ、一定の人数に無料、または格安でのサービス提供を行う方法も有効だ。この場合、実績が増えるだけでなく、満足してもらえれば口コミによる集客も期待できる。

⚠ 注意点
 
これらの手段を活用する場合、「安売り専門家」とならぬよう、無料・格安によるサービス提供期間と人数を明確に決め、誰が見ても明らかにしておくことをお忘れなく。


③ スキル+経験の掛け算で差別化

 単に経験を積むより、他のスキルと組み合わせることで差別化を図ることもできる。

例)行政書士+マーケティング知識で独自の強みを作る
 
たとえば、行政書士の場合、マーケティングの知識・スキルを上乗せすることで、具体的な集客についてアドバイスできる行政書士として活躍することができる。他にも、ITに強い税理士やライティングスキルのある弁護士など、スキルを掛け合わせることで競争力を高められる。

追加の研修や実務講座で、仕事に直結するスキルを磨く
 
実務講座やオンライン講座を活用することで、仕事に役立つスキル補強も有効である。資格試験だけで学ぶことのできない実務のコツや業界の慣習などを学び、よりスムーズに仕事ができるようになるだろう。


④ ポートフォリオで実績を可視化する

 どんなに経験を積んでいても、それが目に見えなければクライアントには伝わらない。そのため、あなたの実績や経歴を可視化する必要がある。

HPやSNSで「過去の仕事」「対応事例」を紹介
 
実績を可視化するには、ホームページやSNSに「過去の仕事」や「対応事例」を記載する方法がある。行政書士の場合、「このような書類を作成しました」「こういった相談に対応しました」と具体的な事例を記載すると依頼につながりやすい。

クライアントの声・口コミを積極的に集める
 
最も有効な広告は、あなたの商品・サービスに満足した顧客の声だ。「この人に依頼してよかった!」の声が目に見えることで、次の仕事を得やすくなる。無料または格安案件を受けるのなら、「口コミに協力してもらう」ことを条件に加えるのも一つの手段である。


5. 「資格+実務経験」で真の専門家になろう

 資格の取得は、専門家としてスタートラインに立つことを意味する。けれど、資格があるだけでは仕事につながりづらく、実務経験を積み、実績を作ることでようやく「選ばれる専門家」になれる。

🔹 資格はゴールではなく、スタートライン
 
資格を取得することは大きな一歩ではあるものの、それだけで「実力がある専門家」とはいえない。知識をどう活かすかを大切にしよう。

🔹 「実務経験ゼロ」のままでは、仕事が取りにくい
 
クライアントが求めるのは、単なる資格者ではなく「信頼ができる専門家」、つまり、実績のある専門家だ。このことをよく理解し、経験が少なくとも依頼につなげる方法を考える、又は実績を積む工夫をしよう。

🔹 小さな仕事から経験を積み、「実績のある専門家」へと成長しよう!
 
はじめから大きな仕事を狙わず、無料や格安の案件、副業や業務委託などをうまく活用し、実務経験を積もう。さらに、実績は目に見える形にし、スキルを掛け合わせて競争力の高い専門家へと成長しよう。

資格+実務経験=真の専門家!

 資格はあるのに仕事がない。こうした悩みを抱えるより、今できることをして、経験を積もう。そうすれば、自ずと資格を活かすことができ、確かなキャリアを築くことができる。

平成弐年式、やぎ座のO型。 ふだんは行政書士事務所の代表、根暗をやっています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です