第4回:「資格を取る=ゴール」になっている人―取得しただけで満足する人が陥る落とし穴

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 第3回「資格があっても採用されない理由」では、「経験・人脈・スキルがないと厳しい現実」に焦点を当てた。第4回では、「資格を取るだけで満足してしまう心理」と「行動を起こさないことで生じる問題」にフォーカスしたい。

Contents

1. はじめに:資格取得はスタートラインのはずが…?

「資格さえ取れば人生が変わる」と思っていたのに、何も変わらない?

 多くの人が資格を取得する際、無意識に「これさえ取れば、自分の人生が変わる」と期待を抱く。資格を取得すれば仕事のチャンスが増える、収入が上がる、もっと良い生活が手に入るなど。特に、社会人になってから資格を取得するとなると、「これで一歩前進だ」「自分は努力している」と感じることが多い。

 しかし、現実に予想していた変化は起きないことがほとんどだ。むしろ、思っている以上に周囲の反応が薄いことに落ち込み、自己評価が低下することもある。「資格を取ったのに何も変わらない」と感じるのは、そういったギャップに由来する。

 資格取得をゴールと捉える人が多い理由として、教育システムや社会的に「資格=能力」と認識される場が多いことにある。試験に合格すれば何かが変わる。または、既に変わったと思い込む。これは、資格学習に集中している間に抱いた期待、資格取得により手に入れられると信じた未来の自分があまりに大きいことが原因だ。

 けれど、資格取得はスタートラインに過ぎない。にもかかわらず、資格を取得し、「やった!」と感じると同時に満足し、次の目標を見失う人が多いのも事実。試験をクリアすること自体が目標となり、その先に考えるべき「活用法」について見えないのだ。

なぜ多くの人が資格を取るだけで満足してしまうのか

 なぜ多くの人が資格を取るだけで満足してしまうのだろうか。その理由を掘り下げると、いくつかの心理的な要素が浮かび上がる。

 まず、資格取得は1つの「成果」で、その達成感から動きが止まる。さらに、社会的な価値基準や他人への期待も影響を及ぼし、資格を取ること自体が目的かするケースが多い。

 たとえば、ある資格を取ったのちに「次はどうするか」のフレーズが頭をよぎるとき、次の一歩を踏み出すには何らかの勇気が必要だ。この点、資格取得を「ゴール」と捉えていると、スタートとなるべき新たな挑戦への足掛かりに届かない。これが、資格取得後に何も変わらないと感じる原因のひとつである。


2. 資格取得に満足してしまう心理

「やり切った感」による達成感 → 本来の目的を見失う

 資格を取った後、多くの人が抱く達成感は非常に強い。この達成感は、長い時間をかけて続けてきた学習や努力の末に得た結果であり、何より「自分が頑張った証」として噛みしめることができる。しかし、この達成感は時に”落とし穴”となることもある。

 資格取得による達成感は自然なものだが、問題は、その先に何をするか考えず行動を止めてしまうことにある。資格取得自体が目的化し、次のステップに進む意欲が欠けてしまうことで、取得後の「本来の目的」を見失い、次に何をすればいいかわからないというジレンマに陥る。

「資格を持っているだけで評価される」という思い込み

 また、資格取得に満足する理由として「資格を持っているだけで評価される」という思い込みがある。資格は自分の能力を証明するものと考え、すぐに社会的な認知や評価につながるものと過信するのだ。特に、資格試験を受ける前には、自己肯定感を高める手段として資格取得を検討する場合が多い。けれど、現実はそうはいかない。資格を持っているだけで評価が得られることは稀で、実務経験やスキルが伴わない限り、その資格の価値は薄れる。むしろ、資格を持っていることのみを他人にアピールすれば、「本当に実力があるのか」という疑念を抱かれることとなる。

努力した分、すぐに報われると期待する心理

 さらに、「努力の分だけ、すぐに報われる」との心理もはたらく。資格取得に向け、多くの時間と労力を費やした後、誰もが「努力は実るべき」と思い込む。しかし、すぐに成果が出るわけではなく、「この資格をどう活かすか」という新たな壁に直面するのが現実だ。こうした期待と現実とのギャップに直面した結果、モチベーションが低下し、失望することもあるだろう。

 だからこそ、「資格」と「成功」を切り離して考え、資格をどう活用するかを考える必要がある。


3. 情報収集ばかりして行動しない人の特徴

 資格を取得した後、必要なのは「実際に行動すること」だ。しかし、「準備不足」と感じ、行動に移せないままでいる人も多い。特に、資格を取得した後に陥りやすいのが「もっと勉強しなくちゃ」「もっと知識を増やさなければ」と考え、知識の収集ばかりに集中してしまうこと。要するに、”頭でっかち”になる。

資格取得後も「もっと勉強しなきゃ」と思ってしまう

 資格試験に合格し、いったん自分を認めるべきところを、さらに自分を追い詰めることがある。このとき、「準備が不十分だからまだ動けない」という不安が潜んでいる。たとえば、実務経験や自信、市場動向に関する情報が不足していることを理由に、学習や調査ばかりを行う人がいる。

 学習自体は大切なことだが、知識ばかりを得たところで、実際の業務に活かすことができない限り、「机上の空論」で終わってしまう。

 この手のタイプは、自己啓発本やネット記事を読み漁り、自分がやるべきことに関する情報収集に時間と労力を費やす。しかし、いくら集めても安心できず、実際に活用することの重要性には気づけない場合が多い。こうして、知識ばかりが先行し、行動に移さないために状況が進展せず無意味に終わる。

「独立のために準備中」と言い続けて数年経過する人

 「独立したい」「フリーランスとしてやっていきたい」と目標を掲げ、資格を取得するも、実際に準備が進まないまま月日が経過するケースがある。準備は大切だが、「万年準備中」では意味がなく、その間に自分のポジションは後退するばかりだ。

 このような人たちは、準備不足を盾に動けないどころか、準備の過程そのものに満足感を抱いているのが特徴でもある。新たな資格を取得することを次のステップと捉え、他の成功者のストーリーばかりを追っては、自分の準備不足を感じ、さらに動けなくなる―――このような悪循環に陥る。

 もし、実際に準備が整ったとしても、実際に何をするか、どう行動するかを考える癖をつけなければ、また同じように準備ばかり続けるだけだろう。結局、こうした人たちが独立への道を一歩も進んでいないことに気づくのは、ずっと先のことだ。

SNSやネットで他人の成功談ばかり追いかけてしまう

 インターネットやSNSで見る他人の成功談に惹かれ、それらに多くの時間を費やす人がいる。確かに、他人の成功サクセスストーリーは魅力があり、自分もその人のようになりたいと憧れる気持ちは理解できるが、問題は、それが自分の幸せだと思い込むことにある。

 他人の成功を自分の成功だと錯覚すると、成功の方法を知るためにその人に関する情報を集めることとなり、あっという間に時間が過ぎる。その結果、「自分は何もしていなかった」という残念な結末を迎えることとなる。

 このほか、SNSで見る成功者の美談や、彼らが使用するツールやサービスに刺激を受け、自分も手に入れなければならないような気持になることがある。こうした情報収集のループに一度ハマってしまうと、次から次に新しい情報を求めるようになり、手と足は止まる。結果として、あなたは何の行動も起こせなくなる。


4. 行動しないことで起こる問題と実例

 資格を取得し、行動しないまま時間だけが過ぎていくことがある。ここでは、そのような場合に起きる問題について、具体例を交えて考える。

就職・開業のハードルが上がる

 資格試験への合格に満足し、実務経験を積むことを怠ると、時間が経つにつれて就職や開業に対するハードルはどんどん高くなる。たとえば、行政書士試験に合格したとする。しかし、合格後に「勉強は嫌と言うほどしたから、あとは実務経験だな」と思うだけで、実際には何の行動も起こさなかった場合、数年後、何の経験もないことに焦る。

 開業や転職を検討する際、同時期に資格試験に合格した人たちは既に、現場での経験や実績を積んでいるとしたら、選考で不利になるだけにとどまらず、依頼を受ける場合に信頼を獲得することも難しい。資格を保有するだけで実務経験が乏しいと、クライアントや雇用主から「実績がないこと」を理由に不安がられる。

 そのため、資格試験に合格してからの期間が長いほど、その実績を埋めるために多くの労力を費やすこととなるのだ。

 このように、資格取得から行動しないままでいた場合、行動しなかった時間だけ自分の成長を妨げることとなり、チャンスを逃すのである。

実際に動いた人のほうが成功確率は高く、時期も早い

 情報収集ばかりしていては、実際に行動した人に勝ることはない。資格を取得したばかりの人にありがちなのが、実務経験を積むのに必要な情報を集めるばかりで、考えすぎて動けなくなること。

 資格取得後、あなたが完璧に準備を整えようと考えている間、別の人はその資格を活かし現場に飛び込んでいる場合、後者は経験を積み、スキルを磨くことができる。その結果、先に成功を収めるが、頭でっかちになり動けなかった人は、ますます後れを取ることとなる。

 情報も大切だが、過度に依存し、行動できなくなるくらいなら無知なほうがマシということもある。

 そもそも、インターネット等で情報を集める場合、膨大な情報量を前に生後判定を行うのは至難の業で、ますます調べること自体を辞められなくなる可能性がある。それではあまりに勿体ないではないか。

資格取得だけで満足し、他のライバルとの差がつく

 資格取得をゴールだと思い込んだ場合、他のライバルとの差が大きくなる。たとえば、行政書士試験の場合。試験合格後、これに満足して終わってしまう人は多い。しかし、資格を持っているだけでは実際の仕事につながることはほとんどなく、登録を経て、実務を行っている人との差は広がるばかりだ。

 資格試験に合格し、すぐにでも実務に従事している人は、否が応でも実務経験を積むこととなり、必然的に他のスキルも身につくことから、成長が止まらない。他方、試験合格後に「これで十分」と考え、行動に移さない人の場合、同じ資格を持っているライバルとの差はどんどん広がり、最終的に、就職や転職、開業時に不利になる。 

 このように、資格取得そのものをゴールとする考え方は非常に危険だ。そのいっぽうで、資格を取得してからが初めてスタートなので、その後の行動によりいくらでも他者との間に差をつけられる。


5. 「資格取得=ゴール」から抜け出すために

 資格を取得すること、それ自体が一つの成果だ。しかし、「合格=ゴール」と考えてしまえば、資格を活かすのに必須である「行動」に移すことはなく、無駄な時間を過ごすこととなる。

 ここでは、資格取得後にどう行動すべきか、そして、成功に繋げる方法について詳しく見ていこう。

資格を取ったらすぐに動く!最初の小さな一歩を踏み出すコツ

 資格取得後、行動に移すことが難しいと感じ、思い悩む人もいる。その理由は、「踏み出すべき一歩の大きさ」に関する思い込みにある。

 資格を取得したあなたに必要なのは、「小さな・・・一歩」だ。

――にもかかわらず、何の根拠もなく「大きな・・・一歩」を踏み出すべきと考える人が後を絶たない。

 たとえば、行政書士の場合。

 登録後に初めての仕事(依頼)を受けるのに対し、不安を抱くのは自然だ。この点、いきなり有料相談を始めたり、大々的に広告宣伝を行うのではなく、「まずは無料で相談に応じる」「知人に資格取得を知らせる」など、小さなステップから踏み出すことをお勧めしたい。ここで肝心なことは、失敗を恐れず、まず手足を動かし、実務経験を積むことだ。

 行動を起こせば、あなたがどこでつまずき、今の自分に何が足りないのかを自認することができ、次にすべきことや方向性を知ることができる。しかし、何もせず、考えているばかりでは、なかなか「次の一手」は見つけられず、時間ばかりが過ぎていくこととなる。

 そのため、小さくてもいいので「初めの第一歩」を踏み出してほしい。

「行動すること」にフォーカスし、仕事につなげる方法

 資格を取得した後、最も大切なのは「行動すること」と繰り返している。なぜなら、資格を持っているだけで仕事に繋がることはないからだ。

 では、どのように行動すれば仕事につなげることができるのだろうか。

ネットワークを広げる:
 
資格取得後、まずはネットワーキングを始めよう。あなたの周りにいる人に対し、資格を取得したことを報告し、同じ業界で活躍する人たちとつながりを持つことをお勧めする。SNSやセミナー・勉強会、業界のイベント等に積極的に参加し、さまざまな情報を得たり、チャンスにつなげることを意識して。

実績作りにプロボノ活動やボランティアを行う:
 
実務経験が足りないと感じるのなら、はじめから依頼につなげることばかり期待するより、ボランティアや無料相談などから始め、徐々に実績を積む方法を検討しよう。これにより自信をつけることができ、クライアントや雇用主に対し、有効なアピールができるようになる。

具体的な目標を設定する:
 
資格を取得した後、漠然と「やりたいこと」を考えるばかりでは、行動に移すのが難しい。目標は具体的に設定し、達成までに必要な工程に分けて考えるといい。たとえば、単に「仕事をつなげる」と考えるより、「〇か月以内に初めての案件を受ける」「〇以内に5件以上の特定案件をこなす」といった具合に、実現可能性の高い目標を設定して行動することで、進捗確認を行いながら前進することができる。

成功している人は何をしているか

 いわゆる「成功者」には共通する特徴がある。彼らは資格を取得した後、いったい何をしてきたのだろうか。

1.継続的な自己研鑽

 成功者の多くは、資格取得後も学ぶ姿勢を保っている。それは、新たなスキルの習得に限らず、常に最新の業界動向を把握するためでもある。自分が得た知識やスキルについて、常に市場で通用するかを意識し、自己研鑽を続ける姿勢こそ成功へのカギである。

2.積極的なチャレンジ

 成功者は、リスクを恐れない。はじめは小さな案件から挑戦し、失敗を恐れることなく行動を続ける。資格を取得しただけで満足することはなく、自らチャンスをつかむため、次々に新しいことへ挑戦しているのである。

3.失敗から学ぶ

 成功者の多くは、失敗を「学びのチャンス」と捉える。はじめから完璧を目指すとあれこれ難しく考えなければならないが、彼らは失敗やうまくいかない場面で「それらをどう活かすか」を大切にしている。失敗を恐れて行動できないくらいなら、失敗を重ね、そのぶん成長していけば最終的に成功につながるのだ。


6. まとめ:資格は「使ってナンボ」

 資格を取得するには、少なからず費用コストと労力がかかる。それらを払ってでも得たこと自体は素晴らしい成果だが、その後の行動こそが何よりも大切なことを、ここでもう一度確認しよう。

 資格を取得しただけでは、現実は一ミリも変わらない。その資格をどう活かし、どう仕事に繋げるかはあなた次第だ。

資格を取っただけでは何も変わらない

 資格試験への合格は、あくまでもスタートラインに立つことだ。資格を手に入れた時点で得る喜びや達成感は理解できるが、それは、これから得る喜びや成功に比べれば小さなものだ。その後、どれだけ実務にて活用できるかこそ大切にしてほしい。

 たとえば、資格試験に合格した途端、「これで安泰」などと考えてしまえば、時間の経過とともにあなたの市場価値は下がる。実務経験の伴わない資格は、同じ資格を持つ経験者たちとの差を埋めるのが難しいのである。

 資格は「使ってナンボ」だ。持っているだけでは意味がない。実際に使わなければ、自分のスキルを証明し、価値を高めることはできないことを肝に銘じておこう。

行動しなければ、努力は報われない

 資格試験までに費やした時間や労力は決して無駄ではないが、合格後に行動しない限り、そこまでに費やした努力は水の泡となる。資格をとった後に行動しなければ、時間の経過とともに知識は風化し、他の合格者たちに後れをとる可能性ばかりが高まる。

 行動を起こすには大きな勇気が必要だが、その一歩は、あなたに必ず新たなチャンスをもたらす。初めての依頼・案件を受けることで実務経験となり、その後の成長へと繋がる。さらに、行動があなたと周囲の人々とをつなげる懸け橋となり、あなたの可能性を広げてくれる。

 「資格さえあれば」の考え方だけで成功に至ることはなく、行動こそ、資格を活かすのに必要な道である。

「勉強」より「実践」を意識して

 資格学習は重要だが、その後に待つ実践を意識することは更に大切だ。

 資格を持っていること自体を評価される場は限られ、その資格を活かし、現場にどれだけ貢献できるか、どれだけ成果を出せるかが評価のポイントとなる。

 実際に仕事をこなさなければスキルは磨かれず、学んだことを実践しなくては成長しない。資格の取得後、どれだけ多くの実務を経験し、自分のスキルを広げられるかが成功のカギを握っている。

 「勉強すること」はもちろん大切だが、それは実際の仕事やビジネスがあってのこと。資格の真価が発揮されるのは試験会場ではない。実践を通じ、あなたが感じ、学ぶことを糧に進む次のステップこそ、最も価値のあることだと筆者は思う。


最終ポイントは、資格を活かすための行動

 資格取得自体が無駄とはいわない。しかし、本当に大切なのは資格をどう活用するかだ。はじめの一歩を踏み出し、積極的に行動することが、資格を持っているだけの状態から脱却し、成功へ繋げられる唯一の道である。

 資格の取得をゴールと捉えず、取得後、どう動くかがあなたの人生における成功を左右する。学習や情報収集に偏らず、実践と行動を意識し、仕事に繋げることで資格は真に活かされ、結果として大きな成果を生み出す。

 資格試験に合格したあなたへ。

 おめでとうございます。次は、その資格をどう活かすかを考え、行動する番だ。成功は、あなたが動いた先に待っている。

平成弐年式、やぎ座のO型。 ふだんは行政書士事務所の代表、根暗をやっています。

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