第2回:自己分析の欠如 — 自分の強みと市場のニーズを見誤る

当サイトの一部にアフィリエイト広告を含みます。

1. 仕事がある資格・ない資格の違い

 資格をとることは一つの自己投資だが、その後、市場においてどれほど活躍でき、仕事に結びつけるのかにより、資格の市場価値は大きく変動する。つまり、市場なくして資格の価値ははかれない

仕事がある資格

 仕事がある資格は「市場価値が高い資格」と言い換えられる。価値が高いということは需要が高く、仕事が多く存在するということだ。

 たとえば、プログラミングやネットワーク関連等のIT資格、看護師や医療事務などの医療・介護関連資格、行政書士司法書士弁護士などの法務関連資格は安定的な需要が見込めるため、専門知識を活かし、他の仕事に比べると仕事に直結させやすいといえる。

 IT関連資格では、システムエンジニアやプログラマーなど、ネットワーク関連の資格も企業のIT部門で求められることが多い。特に、デジタル分野の発展にともない、これらのスキルを持つ人材へのニーズは年々上昇している。

 医療や介護に関わる資格についても、急速に進む高齢化や医療の複雑化に伴い、安定した需要が見込める。特に、看護師や医療事務等の資格は、実務経験が求められるケースは多いものの、専門職としての需要が”常に高い”ため、経験が浅くとも収入につなげやすい。

 法務関連資格では、行政書士司法書士弁護士など法律に関わる手続きのサポート業務が多く、需要は不変的である。ただし、他の資格と比べ、取得にかかる時間と費用コストが高い傾向があり、その点を考慮して挑戦することをお勧めする。

仕事がない資格

 いっぽうで、市場価値が低く、仕事に繋げるのが難しい資格も存在する。これらの資格は、時代のニーズに合ったスキルや知識を提供できない場合が多のが原因だ。たとえば、過去に流行した資格や、競合が多く、飽和状態にある分野については、就職や転職に武器として役に立たないだろう。

 では、どんな資格が該当するのかといえば、マイナー資格や業界が限定的なものだ。これらの資格は活用範囲が限定されることから、需要そのものが低くなり、資格取得者の数が増えるほど供給過多となる。そのため、就職市場でそれに見合うポジションを探すのに苦労する場合がある。


2. 資格取得者の飽和問題

 資格を取ること自体は素晴らしい一歩だが、その後、飽和状態がもたらす現実は決して軽視できるものではない。資格の取得者が増え、需要がそれに見合わなくなると、単に資格を保有するだけで仕事を得るのは難しい。


1) 資格を持っている人が多すぎる

 現在、特に人気の資格分野において、資格取得者が急増している。たとえば、行政書士宅地建物取引士簿記など、数年前には大変競争率が高かった分野でも、今では資格保持者が増え、競争が激しくなっている。これが飽和問題の根本的な原因である。

資格取得者の増加と需要のアンバランス
 資格が人気になると、それに伴って資格を取得する人も増える。しかし、需要はそれに追いつかず、競争だけが激しくなり、どれだけあなただけの価値を見出せるかという壁が生じる。たとえば、税理士弁護士など法律専門職の場合、いくら資格があっても同業者と差別化できなければ難易度の高い案件を得ることはできない。


2) 競争の激化と差別化の必要性

 資格取得者の増加により、同じ資格を持つ人同士の競争が激化している。この状況で生き残るには、どれだけ他と差別化できるかにかかっている。

市場で目立つには:
 資格を取るだけでなく、その資格をどう生かすかがポイントだ。この点、より専門性を高め、他の追随を許さぬほど特化することで差別化が図れる。たとえば、行政書士の場合、単に「許認可申請を行います」というだけでなく、特定の分野に特化した許認可を専門にするなど、より細かな部分で差別化を狙うと効果的だ。

ターゲットを絞る:
 資格を活かし、実際に仕事を得るには、ターゲットの絞り込みが有効だ。たとえば、年齢層、業種、特定の地域などを対象にすることで、競争を避けることができる。また、個人・法人を区別することも差別化の一手となる。


3) 資格を持っているだけでは通用しない時代

 現代において、資格を取得するだけで仕事を得るのは困難だ。そのため、市場で資格以外のスキルや経験、自己アピールの方法を考える必要がある。

資格だけでは足りない時代:
 時代は、いま生きている我々がつくるものだ。現代を生きる人の多くが何らかの資格を取得している今、各業界で飽和状態となっており、スキルセットの拡充が求められている。たとえば、行政書士の場合は、ただ資格を保有しているだけでなく、ITやマーケティングなど業務に役立つ他のスキルとの掛け算を求められる場が多い。

付加価値をつける:
 資格を取得後、仕事の受注に繋げられない理由の一つとして、「他の資格取得者と同じことをしている」点が挙げられる。繰り返しになるが、市場で仕事を得るには差別化が必須の現代において、他の取得者と同じことをしていては意味がない。たとえば、宅地建物取引士として活動するのなら、不動産投資に特化した知識提供を行うなど、より専門的なスキルを持つことでクライアントからの信頼も厚くなるだろう。


4) 飽和問題に対する戦略

 資格の飽和問題に直面した場合、以下のアクションが有効だと考えられる。

パートナーシップの活用:
 激しい競争の中で生き残るには、他の専門家との連携サービスが考えられる。たとえば、行政書士の場合、自分と異なる専門を持つ行政書士と協力し、相続×不動産で提供するなど、横のつながりを意識してサービスを拡充することで差別化を目指す。

リピーターの獲得:
 飽和状態の市場で生き残るには、単発スポット業務に限らず、リピーターを増やすことを意識したい。そのためには顧客満足度を意識したコミュニケーションやアフターケアを大切にするといい。単に、○○屋さんと覚えてもらうより、一個人として覚えてもらうとさらに効果的である。


3. どうすれば仕事につながるか?

 では、実際に仕事を得やすい資格とはどのようなものだろう。
 答えは、現在だけでなく、今後も需要拡大が見込まれる資格だ。

1) ネットワーキングの活用

 資格取得後、はじめに自分の持つ知識やスキルを広めよう。資格取得者が集まる勉強会やイベント、セミナーには積極的に参加し、同じ志を持つ人々とのネットワークを築くのも効果的だ。

業界のイベントに参加する:
 特定の資格に関する勉強会やセミナーでは、同じ資格を持つ人とつながりを持つチャンスだ。また、そこで得られる業界の最新情報や、実際に働いている人から聞く生の声は大変貴重である。これにより、実際にその資格がどう活用され、どんな課題を抱えているかといったリアルな情報を得ることができる

SNSの活用:
 Instagram、Facebookなどを介し、資格に関わる情報を発信したり、専門家とのつながりを持つことも大切だ。そうした中で自分の知識やスキルを積極的にアピールすることで、他の資格者や企業とつながり、仕事に繋がる可能性を高められる。


2) 実務経験を積む

 資格の取得後、最も大切なことは実務経験を積むこと。取得したのみでは資格の可能性は未知数のまま。自分でもよくわからない資格を売り込むなど到底できるわけがない。現場において、実際にその資格がどう活用されているかを肌で感じることで、次のステップへ地下強い一歩を踏み出せるはずだ。

インターンシップやアルバイト:
 資格取得後に実務経験を積む方法として、インターンシップやアルバイト等が考えられる。特に、初めてその資格を活用する場合、実務を通し、知識と経験を経て少しずつ自信をつけよう。これにより、就職や転職時に用いる履歴書に強みを加えられ、他の求職者との差別化が容易となる。

フリーランスとして活動する:
 資格取得後に実務経験を積む場は、企業への就職だけではない。フリーランスとして働く選択肢もある。たとえば、行政書士の場合は、契約書の作成や許認可申請の代行を務められる。フリーランス最大の強みは、自分のペースで案件をこなせる点だが、その反面、集客や営業活動も自分に担うこととなり、経営スキルを総合的に磨くことができる。

ボランティアなど無償の仕事:
 経験を優先するのなら、はじめは報酬を求めず、ボランティアや無償での活動をおこなう方法もある。行政書士の場合、友人知人等の申請書類を作成するのを手伝うなど、実際の業務に触れ、スキル向上を目指すのも立派な手段だといえる。


3) 資格を活かした専門分野に特化する

 どの資格にもある程度の専門性を持たせることができ、一般的な資格取得者と差別化を図るため、特定の分野に特化するのが有効だ。広く浅く資格を活かすのに比べ、浅く深く掘り下げ、特定分野でしっかりとした強みを持つ方が仕事を得やすくなる。

 たとえば、行政書士なら、相続に関する手続きを専門にするほか、法人設立や許認可に特化したサービスを提供するなど、自分の強みをアピールすることが大切である。

ニッチな市場を狙う:
 いくら同じ資格を持つ人が多いとしても、特定のニッチ市場を狙うことで競争優位性を獲得することは可能だ。たとえば、介護業界なら、特に、介護福祉士やケアマネージャーなど、特定の職種に特化したスキルや知識をアピールするのが有効だろう。

認知度を高める:
 専門とする分野で認知度を高めることは、自分に依頼が集まる確率を高め、需要をつかむのに役立つ。認知度を高めるには、ブログYouTubeSNS等を活用し、専門家として信頼を築くことが重要だ。


4) セルフブランディングの実施

 資格取得後において、他の取得者と差別化を図るには、セルフブランディングが不可欠だ。自分の強みを意識し、積極的にアピールしよう。

プロフィール作成:
 あなたの経歴や資格、実績をしっかりとまとめ、履歴書やポートフォリオ、SNS等に反映させることで、他者に強い印象を与えることができる。特に、専門家の多いサイトの場合、自己紹介文や業務内容、資格取得証明書などを使用することで、より高い効果が期待できる。

実績の公開:
 資格を活かした仕事をしているのなら、その成果を公開するのも非常に効果的である。たとえば、あなたがどのような案件を担当し、実際にどのような結果を出したのかを客観的な指標を用いて提示することできれば、信頼性の向上に繋がり、結果的に仕事獲得が期待できる。


終わりに

 資格を取得することも大切だが、最終的な市場価値を決めるのは、その資格をどう活かし、他者と明確な差別化を図ることができるかだ。取得だけで満足するのも構わないが、本当に変わりたいのなら、その後の努力と工夫は不可欠なことをお忘れなく。

 これから資格を取得したいのなら、それにどの程度の市場価値があり、他者との競争率がどのくらいかを熟考の上、選ぶことをお勧めしたい。そして、実際に取得した後には、その知識やスキルをどう活用するかを常に意識し行動してほしい。

 あなたのスキルやキャリアアップに資格を用いるのなら、冷静な市場分析と適切な戦略が不可欠だ。

平成弐年式、やぎ座のO型。 ふだんは行政書士事務所の代表、根暗をやっています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です