第1回:資格取得とその現実 — 期待と現実のギャップ

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1. 資格取得に対する期待

 資格は、自己投資の一環として魅力的に映るようだ。特に、30代~40代の男性に人気で、「この資格をとれば、キャリアアップや収入アップにつながる」と期待を抱く人も多い。なんとなくだが、気持ちはわかる。社会的な信用を得るため、必要なスキルを証明するのに資格を1つの武器としてとらえているのだろう。

 多くの人が、資格取得により”今の状態”から抜け出し、さらに良い状況やポジションに進めるのだと考える。おそらく、資格取得の|過程《プロセス》自体を自己成長のステップだと捉えているのだろう。こうした期待感こそが学習や試験へのモチベーションであり、原動力となる。 


資格を取る前の多くの人が持っている「理想」

(1)資格を取ればすぐに仕事が見つかる

期待:
「資格さえ取れば、就職や独立が簡単になる」
「求人が溢れていて、すぐに稼げるようになる」

現実:

  • 資格だけで採用されることは少なく、実務経験が重視される
  • 独立しても、すぐに顧客がつくわけではない
  • 競争が激しく、資格保持者同士の差別化が必要

具体例:
 行政書士試験に合格したものの、開業したら仕事がない…(資格取得後に実務経験を積む重要性)


(2)資格を取れば信用される

期待:
「資格を持っているだけで、権威性が生まれる」
「周囲からの評価が上がる」

現実:

  • 資格があるだけでは信用は得られない
  • 実績・経験・発信がなければ、資格の価値は生まれない
  • 顧客は「資格を持っているか」より「この人に依頼して安心か?」を気にする

具体例:
 宅建士の資格を取ったが、不動産営業では成績が上がらない(資格より営業力が求められる)


(3)資格を取れば収入が上がる

期待:
「資格を取れば、給料が上がる」
「独立すればすぐに高収入になれる」

現実:

  • 会社によっては資格手当がほとんどつかない
  • 資格を活かした仕事につかないと収入に直結しない
  • 独立しても、収入が安定するまでに時間がかかる

具体例:
 社労士資格を取ったが、企業の人事部で働き続けるだけでは給料がほぼ変わらない(資格を活かせる仕事に転職しないと収入に直結しない)


2. 現実とのギャップ

 しかし、現実はどうか。いざ資格を取得してみると、色々なギャップを感じるだろう。以下に、課題と理由を考える。

(1)「資格を取ったのに仕事がない」問題

  • 資格取得者が多すぎるため、供給過多になっている
  • 仕事を得るための営業・マーケティングが必要
  • 資格が活かせる職種に就かないと意味がない

 取得した資格について、取得者人口が多い場合、いわゆる「供給過多」の状態になっている。誰もが知る資格で起こり得る事例なので、取得前のリサーチである程度の予測はつくのだが、できない者もいるのが現実なのであなたは気を付けてほしい。

 また、医師や弁護士、公認会計士などの有名かつ取得が難しいといわれる資格でない限り、その資格を活かせる業種に就かない限り、雑談の種になるのがせいぜいである。

対策:
 考えられる対策は、「資格を活かせる分野を調べ、戦略的に行動する」こと。できれば、取得前にリサーチすることをお勧めするが、取得後でも遅くはない。


(2)「資格を取ったのにスキル不足」問題

  • 実務経験がないと使い物にならない資格が多い
  • 試験勉強と現場で求められるスキルが違う
  • 企業側も「資格はあるが実務ができない人」を敬遠する

 資格を取得すれば、すぐにキャリアアップや収入増加が実現するということはない。試験への合格は重要な第一歩だが、実際にその資格を活かせる仕事に就けるかどうかは別問題だ。多くの人が直面するのが、「資格を取得しても、実務経験が足りない」という現実である。

対策:
 こうした課題には、「資格取得後、積極的に実務経験を積む方法を考える」のが一番だろう。


(3)「資格を取ったのにお金が稼げない」問題

  • 競争が激しく、差別化できないと稼げない
  • 「資格取得=高収入」ではなく、ビジネススキルが求められる
  • 特に独立開業する場合は、集客が最大の課題

 資格を取得し、その資格を仕事でどう活かすかについて、具体的な|行動計画《アクションプラン》が見えていない人も少なくない。実際に、資格取得後のキャリアパスや実務での応用方法について、合格後でなければ感じることのできない難しさがあるように思う。

対策:
 このような課題に対し、有効なのは「マーケティングや営業力を身につけ、資格を活かすビジネスモデルを考える」ことだと思う。

 試験が難関と呼ばれるほど合格自体の達成感や満足度は高くなり、大きな自信につながる反面、その後、「実際に使う場面」で不安や迷いが襲ってくることもよくある。特に、現実の仕事環境において、資格があるからといって即戦力になれることはなく、すぐに結果が出ないことのほうが多いため、じっと耐えることも必要になるかもしれない。


3. ギャップを乗り越えるために

 こうしたギャップを乗り越えるため、必要なマインドセットを整理しよう。

(1)資格は「武器」であって「ゴール」ではない

  • 資格は仕事を得るための道具であり、それ自体が成功を保証するものではない
  • 仕事の選択肢を増やすためのツールと考える

 資格を取得した段階というのは、単なるスタートラインに過ぎない。取得は参加資格で、スタートしてから何を、どのように進めていくかはあなた次第だ。自分の頭で戦略を練り、その資格を自分の強みとしてどう展開するかを意識した行動が成功のカギを握る。


(2)実務経験がないなら、積極的に作る努力をする

  • 資格を取るだけではなく、関連業務を経験することが重要
  • 無報酬でも実務経験を積める場を探すのもアリ

 資格を活用するには、実務経験が不可欠だ。これだけは端折ることができない。たとえば、資格試験に合格後、必要なスキルや知識を補う目的でプロジェクトに参加し、インターンシップを活用する方法などが考えられる。


(3)「資格+α」のスキルを身につける

  • 資格だけではなく、マーケティング・営業・交渉スキルを磨く
  • 専門知識を発信し、自分の価値をアピールする

 自らアピールしない限り、資格の保有価値は薄くなる。たとえば、旅行中の飛行機内で急病人が出た際、「お医者様はいませんか」とアナウンスがあったとする。このとき、誰もが知る医師ならまだしも、本人や関係者が黙っていれば、医師であることがバレることはまずない。

 これを市場に置き換えると、見込み客の方から欲しいサービスを大声でアナウンスしてくれる場はほとんどなく、こちらから探すしかない。これが営業であり、マーケティングとなる。あなたの価値を決めるのは顧客だが、ある程度コントロールするのも売り手の役割であることを忘れないでほしい。


(4)継続的な学びが必要

  • 資格取得後も情報をアップデートし続ける
  • 競争力を維持するために、新しいスキルを学ぶ

 資格を取得したからといって、焦る必要はどこにもない。あなたのペースでステップアップを図るといい。肝心なのは、取得したことに囚われず、その先にある学びと経験を重ねていくことだ。そうすると、最終的には結果として目に見えるようになる。


4. まとめ

  • 資格は「取ること」が目的ではなく、「どう活かすか」が重要
  • 資格を取っただけで満足すると、現実とのギャップに苦しむ
  • 資格取得後の「行動」と「戦略」が、成功するかどうかを決める

 どの資格も、取得には相応の対価が必要だ。しかし、支払った対価と市場価値が同等かといわれると必ずしもそうとは限らない。その先には「資格をどう活用するか」「実務にどう結びつけるか」という新たな課題が待っている。

 資格を取ったからといってすぐに成功が手に入るわけではないことを肝に銘じ、その先に向けて地道に努力を続ける必要がある。資格取得は、あくまで自分のキャリアアップへの第一歩。ギャップを埋めるには、次のステップへの準備と実践が必要であることをお忘れなく。

5.次回予告

 第2回では、「自己分析の欠如 — 自分の強みと市場のニーズを見誤る」をお送りする。資格を取得したものの、うまく稼げない人の理由を更に掘り下げ、一緒に対策を考えよう。

平成弐年式、やぎ座のO型。 ふだんは行政書士事務所の代表、根暗をやっています。

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