当サイトの一部にアフィリエイト広告を含みます。
1. なぜ“リスク”が怖いのか
独立や開業を目指すものの、「失敗したらどうしよう」と不安を抱え、足踏みする人は多い。そこで疑問なのは、その恐怖や不安に根拠はあるのか。もしかすると、脳が作り出す錯覚ではないだろうか。
人は、本能的にリスクを過大評価する生き物だ。有名なのは、損失回避バイアス(Loss Aversion)と現状維持バイアス(Status Quo Bias)だ。
(1)損失回避バイアス(Loss Aversion)とは
損失回避バイアスとは、人は「得る喜び」よりも「失う痛み」を強く感じるという人間の意思決定における心理的傾向を指す。例えば、1,000円を失った場合と1,000円を得た場合を比較すると、失った場合のほうが心理的な影響は大きく感じる。
これを独立や開業に置き換えた場青、「安定した給料または立場を失うのが怖い」と感じ、リスクの過剰評価による恐れから行動に移せなくなる。その結果、そこまで魅力的でなくても現状の安定が手放せなくなる。
(2)現状維持バイアス(Status Quo Bias)とは
現状維持バイアスとは、人は変化を避け、現状を保つことを好むという人間の意思決定における心理的傾向を指す。安定的で、慣れ親しんだ状況を「安全で快適」と感じ、変化により得られるであろうメリットが大きいとしても、その変化を拒むことがある。特に、成功体験の少ない人ほど変化をリスクと捉える傾向が高い。
2. 行動経済学で見る“リスク”の正体
行動経済学では、人がリスクをどう捉え、反応するのかを研究しており、経済的な選択だけでなく、日常生活やキャリアに関する決断にも影響を及ぼすと考えられている。
(1)行動経済学で見るリスクとは
一般的に、リスクとは「不確実性の中における損失の可能性」を指すが、行動経済学上は、「人がどう感じ、行動を選択するか」に注目する。
客観的なリスク | 確率や統計で示される実際のリスク |
主観的なリスク | 人がリスクをどれくらいの大きさで感じるか |
(2)行動経済学で見るリスク認識のバイアス
行動経済学では、人のリスク認識に影響を与えるバイアスや心理的傾向を下記のように表す。
① 損失回避バイアス(Loss Aversion)
- 内容:人は「失う痛み」を「得る喜び」よりも強く感じる傾向がある。
- 例:独立開業の成功で年収が200万円増える可能性よりも、現在の収入を失う可能性を過剰に恐れる。
- 影響:リスクが実際よりも大きく感じられ、行動を抑制する。
② 現状維持バイアス(Status Quo Bias)
- 内容:人は現状を保つことを好み、変化を避ける。
- 例:独立の成功率が高いと知っていても、「現職の安定」を手放せない。
- 影響:新しい挑戦に踏み出すことを遅らせる。
③ 確実性効果(Certainty Effect)
- 内容:人は確実な結果を過剰に好む。
例:10万円の確実な利益よりも、50%の確率で20万円を得られる選択肢を選ばない。 - 影響:不確実性の高い挑戦を避け、確実性のある現状維持を選ぶ。
④ フレーミング効果(Framing Effect)
- 内容:同じ選択肢でも、提示の仕方でリスクの捉え方が変わる。
例:「独立して成功する確率は70%」→前向きに捉えやすい
「独立して失敗する確率は30%」→後ろ向きに捉えやすい。 - 影響:情報の見せ方によって、リスク評価が歪む。
⑤ アンカリング効果(Anchoring Effect)
- 内容:人は最初に得た情報(アンカー)に影響されやすい。
例:「独立しても成功する人は少ない」と聞いた場合、それが基準となって成功の可能性を過小評価する。 - 影響:他人の意見や一部の情報が、リスク評価を左右する。
(3)リスク評価のメカニズム
人がリスクを判断するとき、感情と合理的思考が密接に絡み合います。
① 感情的評価(Affective Evaluation)
直感的、感情的にリスクを捉える傾向のこと。たとえば、「失敗したら恥ずかしい」と考えている場合、この感情が先行することにより実際よりも大きくリスクを評価することがある。
② 認知的評価(Cognitive Evaluation)
確率や統計に基づき、冷静かつ合理的なリスク分析を行うこと。たとえば、成功率が50%の場合、十分挑戦する価値があると判断する場合が該当する。ただし、多くの場合、人は認知的評価より感情的評価を優先するし、冷静な分析は困難とされる。
4.リスクの正当評価と乗り越える方法
行動経済学では、リスクの正体を理解し、冷静に対処するための手法が提案されている。
① リスクを分解して具体化する
目の前のリスクについて、「失敗した場合に何が起きるか」「回復可能性はどのくらいか」など、細かく分けて具体化する。たとえば、独立後1年間の生活費を算出し、貯蓄で賄える期間を確認すると不安が軽減されることもある。
② スモールステップで挑戦する
リスクを小さく分解し、小さな成功体験を積み上げる。たとえば、副業から始め、成功パターンを見出してからフルタイムでの独立を実現する方法が考えらる。
③ 最悪のケースを想定する
具体的に最悪の結果を想像し、不安をコントロールする。たとえば、独立に失敗すると再就職が必要となることもあるだろう。その場合でも、生活が維持できる可能性や方法を確認する。
④ ポジティブなフレーミングを活用する
リスクに対し、「失敗の可能性」ではなく「成功のチャンス」と捉えるよう繰り返し意識する。
⑤ コミットメントデバイスを使う
コミットメントデバイス(Commitment Device)とは、人が将来の行動を自分で制約したり、望ましい行動を取るよう誘導する仕組みや工夫を指す。たとえば、友人や知人に目標を宣言し、進捗を定期的に報告したり、SNSで公開するなど、逃げづらい状況を意図的に作り出す方法が挙げられる。
行動経済学者であるリチャード・セイラー氏などの研究によれば、こうした仕組みを利用することで、自己制御の弱さを補い、長期的な目標達成を容易にできるといいます。
5. リスクは味方にできる
行動経済学でリスクの正体を知ることで、不安を過剰に感じる理由や1歩踏み出せないメカニズムが明確になるはずだ。リスクは恐怖の対象とせず、正しく評価して活用することが成功への第一歩である。
リスクの捉え方、向き合い方は、あなたの意思決定や未来に大きな影響を与えます。行動経済学の視点を活かし、心理的なバイアスに振り回されず、より良い選択ができることを祈っています。目標達成や課題解決の場面において、リスクを正しく理解し、活用できる力をお互いに磨きましょう✨