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当ページでは、賃貸物件を相続する際に必要な手続と注意点を解説します。
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筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′)
榊原行政書士事務所 代表行政書士
やぎ座のO型。趣味は写真を撮ること、神社をめぐること。
賃貸物件の相続
被相続人の遺産にアパート等の賃貸物件が含まれる場合、一般的な相続と異なる手続が必要です。
賃貸物件の評価額
遺産に不動産が含まれる場合、自宅等の「居住用物件」、投資用の「賃貸物件」に大別されます。
両者の大きな違いは、用途の違いと査定方法です。
不動産の相続税評価額は、居住用物件と比べて低くなることがあります。
建物の評価方法
賃貸物件のうち、建物の相続税評価額は下記の式にて算出します。
自用建物評価額-(自用建物評価額×借家権割合)
令和5年(2023年)時点における借家権割合は、30%です。
土地の評価方法
借家建付地の相続税評価額は、下記の式にて算出します。
自用地評価額-(自用地評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)
借地権割合とは、30%から90%までの7段階に分類されるもので、国税庁が公表する「路線価図」により、各地の借地権割合を確認することができます。
多くの土地で50%から60%で設定されていますが、異なるところもありますので、必ず確認しましょう。
賃貸物件の相続手続
遺産に賃貸物件が含まれる場合、次の手続が必要です。
1.ローン等の残債務を確認
被相続人が賃貸物件を購入する際、金融機関等から融資を受けている場合があります。
相続発生後、金融機関との契約関係、残債務の確認を行いましょう。
融資を受けている場合、対象物件の登記簿謄本上に抵当権設定がされているのが一般的です。登記簿謄本は法務局にて取得することができます。
1-1.相続する場合
残債務を確認し、相続(単純承認または限定承認)を選ぶ場合、契約先である金融機関に連絡し、必要な手続をとります。
1-2.相続放棄する場合
残債務額が負担になる場合、相続開始から3か月以内に、家庭裁判所に「相続放棄」の申述手続を行いましょう。
この場合、他の遺産も全て相続できなくなりますので、総合的な判断が必要です。
2.遺産分割協議
被相続人が遺言書を残していない場合、相続人全員による遺産分割協議を行います。
遺産分割協議とは、被相続人の遺産について、誰が、何を、どのくらい相続するかを話し合うもので、賃貸物件も含めて話し合います。
協議が調ったら遺産分割協議書を作成し、相続人全員の署名押印、押印時の印鑑に対応する印鑑登録証明書を取得し、全員分添付する必要があります。
2-1.相続開始後の賃料
相続発生前の賃料は、相続財産に含め、遺産分割の対象とします。
いっぽう、相続開始から遺産分割成立時までの賃料は、原則、遺産分割協議時の決定に従います。
ただし、遺産分割協議にて話し合っていない場合、法律に定められる法定相続割合に従い、各相続人が取得します。
3.相続登記
遺産分割協議により、賃貸物件を相続する相続人の名義に変更するため、相続物件の所在地を管轄する法務局において、登記申請を行います。
この際、下記の書類が必要です。
4.契約内容の確認
賃貸物件が加入する火災保険、地震保険等の名義や契約内容を確認しましょう。
保険証券がある場合、保険会社に連絡し、契約内容も含め、必要な手続を行いましょう。
5.賃貸借契約の承継手続
法律上、賃貸人の変更を借り手に告知する義務はないものの、通知をしておくのがオススメです。
借り手以外にも、仲介として管理会社を入れている場合、当該会社にも連絡し、賃料の振込先変更等の手続を行いましょう。
被相続人が敷金を預かっている場合、賃貸借契約終了時、借り手に返還する義務があります。
このため、借り手ごとに契約内容を確認しておきましょう。
賃貸物件を相続する際の注意点
賃貸物件を相続する場合、相続税の申告・納税、被相続人の準確定申告の要否を検討しましょう。
相続税は、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数))を上回る場合、超過額に対して課税されるため、必ず必要なものではありません。
また、賃貸物件を相続した相続人は、賃貸物件について確定申告を行う義務を負います。
税関連の手続は煩雑なものも多いため、税務署または税理士までご相談ください。
賃貸物件の相続に必要な手続、注意点まとめ
当ページでは、賃貸物件を相続する際に必要な手続と注意点を解説しました。