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問題35
遺言に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。
ア 重度の認知症により成年被後見人となった高齢者は、事理弁識能力を一時的に回復した場合であっても、後見開始の審判が取り消されない限り、遺言をすることができない。
イ 自筆証書遺言の作成に際し、カーボン紙を用いて複写の方法で作成が行われた場合であっても、自書の要件を満たし、当該遺言は有効である。
ウ 夫婦は、同一の証書によって遺言をすることはできない。
エ 遺言において受遺者として指定された者が、遺言者の死亡以前に死亡した場合には、受遺者の相続人が受遺者の地位を承継する。
オ 遺言は、遺言者が死亡して効力を生じるまでは、いつでも撤回することができるが、公正証書遺言を撤回するには公正証書遺言により、自筆証書遺言を撤回するには自筆証書遺言により行わなければならない。
正解:イ・ウ
この問題は、遺言に関する形式的要件と効力に関する理解を問われるものです。
誤った選択肢には、判例や通説に反する記述が含まれ、知識が浅い場合は混乱を招くおそれがあります。
ア:妥当でない
成年被後見人が事理弁識能力を一時的に回復した時において、医師2人以上の立会いがあれば遺言することができます(民法第973条第1項)
この際、後見開始の審判取消しは不要であり、一時的な意思能力の回復さえ認められれば遺言は有効となります。
したがって、「事理弁識能力を一時的に回復した場合であっても、後見開始の審判が取消されない限り、遺言をすることができない」とする本肢は誤りであり、妥当とはいえません。
イ:妥当
自筆証書遺言を作成するには、遺言者による全文、日付及び氏名を自署し、これに印を圧す必要があります(民法第968条第1項)。
カーボン紙を用いて複写する場合、書いた文字の複写先には遺言者自身の筆勢が残ることから、自書要件を満たすと考えられています。
したがって、本肢は妥当です。
ウ:妥当
遺言は、2人以上の者が同一の書証ですることができません(民法第975条)
したがって、たとえ夫婦であっても同一の証書による遺言は無効であり、本肢は妥当です。
エ:妥当でない
遺贈について、遺言者の死亡以前に受贈者が死亡した場合、遺贈の効力は生じません(民法第994条第1項)。
効力を生じないため、受遺者の相続人が遺贈を承継することはできず、そのような規定も存在しません。
したがって、本肢は妥当ではありません。
オ:妥当でない
遺言の撤回について、遺言者は、いつでも遺言の方式に従い、その遺言の全部または一部を撤回することができます(民法第1022条)。
この撤回に際し、特定の形式は定められておらず、公正証書遺言の内容を自筆証書遺言で撤回することも可能です。
また、遺言者が新たに別の方法により遺言を作成することも認められることから、本肢は妥当とはいえません。