当サイトの一部に広告を含みます。
問題32
AとBとの間でA所有の美術品甲(以下「甲」という。)をBに売却する旨の本件売買契約が締結された。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定に照らし、妥当なものはどれか。
1 Aは、Bが予め甲の受領を明確に拒んでいる場合であっても、甲につき弁済期に現実の提供をしなければ、履行遅滞の責任を免れない。
2 Aは、Bが代金の支払を明確に拒んでいる場合であっても、相当期間を定めて支払の催告をしなければ、本件売買契約を解除することができない。
3 Aが弁済期に甲を持参したところ、Bが甲を管理するための準備が整っていないことを理由に受領を拒んだため、Aは甲を持ち帰ったが、隣人の過失によって生じた火災により甲が損傷した。このような場合であっても、Bは、Aに対して甲の修補を請求することができる。
4 Aが弁済期に甲を持参したところ、Bが甲を管理するための準備が整っていないことを理由に受領を拒んだため、Aは甲を持ち帰ったが、隣人の過失によって生じた火災により甲が滅失した。このような場合であっても、Bは、代金の支払を拒むことはできない。
5 Aが弁済期に甲を持参したところ、Bが甲を管理するための準備が整っていないことを理由に受領を拒んだため、Aは甲を持ち帰ったが、隣人の過失によって生じた火災により甲が滅失した。このような場合であっても、Bは、本件売買契約を解除することができる。
正解:4
この問題は、売主と買主との間で発生するリスク負担に関する問題です。
肢別に異なる規定を問われるため、関連する複数の条文を理解し、適切な対応ができるかがポイントとなります。
特に、民法第567条第2項の理解が問われる典型的なリスク負担問題といえます。
1:妥当でない
Aが甲をBに引き渡そうにも、Bが予め受領を拒否している場合、Aは現実の提供を要しません。
この場合、Aが提供したことにならず、履行遅滞の責任は生じません。
Bの受領拒否により、Aの履行義務は免除されることから、「甲につき弁済期に現実の提供をしなければ、履行遅滞の責任を免れない」とする本肢は誤りです。
したがって、本肢は妥当ではありません。
2:妥当でない
Bが代金の支払を明確に拒んでいる場合、Aは催告なく契約を解除することができます。
催告は、代金の支払が遅れている場合に求められる手続で、支払拒否の場合にまで求められるものではありません。
「相当期間を定めて支払の催告をしなければ、本件売買契約を解除することができない」とする本肢は誤りです。
したがって、本肢は妥当ではありません。
3:妥当でない
売主Aが契約内容に適合する甲を使い、引渡し債務を履行したにもかかわらず、Bが受領を拒み、隣人の過失により生じた火災が原因で甲が損傷した場合、Aには責任がなく、BからAに対し、甲の修補を請求することはできません。
したがって、「Bは、Aに対して甲の修補を請求することができる」とする本肢は誤りであり、妥当とはいえません。
4:妥当
本肢の場合、Bが甲の受領を拒否しても、Bは代金の支払義務を免れることはできません。
物の滅失がBの過失によらず、第三者の過失によるものであることから、代金支払義務はBに残り、Bは引き続き代金支払義務を負うことになります。
したがって、本肢は妥当です。
5:妥当でない
Bは甲の受領を拒否した場合、Aは履行を提供したことになります。
その後、甲が隣人の過失により滅失した場合でも、Bは契約を解除することはできません。
つまり、Aは履行を完了しているため、Bが受領を拒否した段階で契約解除権が認められなくなります。
したがって、本肢は妥当ではありません。