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当ページでは、ADR(裁判外紛争解決手続)の種類と利用の流れ、注意点を解説します。
Contents
ADR(裁判外紛争解決手続)とは
ADR(裁判外紛争解決手続)とは、裁判によらず紛争を解決する方法を指します。
(1)ADRと裁判の違い
原則、裁判は公的な法制度に基づいて行われ、公開の法廷において裁判官により判決が下されます。
いっぽう、ADRの場合は非公開で手続を行い、当事者間の合意を重視した解決がはかられる点で大きく異なります。
ADR (裁判外紛争解決手続) | 裁判 | |
---|---|---|
手続の性質 | 柔軟 | 厳格 |
費用 | 一般的に安価 | 比較的高額 |
時間 | 数週間~数ヶ月 | 数ヶ月~数年 |
柔軟性 | 高い | 低い |
公開の別 | 非公開 | 原則、公開 |
法的拘束力 | 調停、あっせんの場合はなし 仲裁には法的拘束力あり | あり |
ADRの種類
ADRは運営主体により、下記に分類されます。
- 司法型
- 行政型
- 民間型
1.司法型ADR
司法型ADRとは、裁判所が関与して行われる裁判外紛争解決手続を指します。
裁判所の枠組み内において運営されるため、公的な要素が強く、一定の信頼性や法的な保障が確保される特徴があります。
手続は裁判と同じ面々によりますが、通常の裁判より柔軟な手続で解決を目指し、費用・時間の削減が期待される方法です。
2.行政型ADR
行政型ADRとは、行政機関が主体的に行う裁判外紛争解決手続を指します。
特定分野における紛争を専門的に扱い、迅速かつ効率的に解決を目指すもので、行政機関の知識や権威性を活かし、解決をはかることを目的とします。
例えば、消費者問題は消費生活センター、不動産に関するものは不動産適正取引推進機構が関与するため、専門的な知見を用いて紛争解決を図ることが期待される方法です。
3.民間型ADR
民間型ADRとは、民間の団体や組織が運営する裁判外紛争解決手続を指します。
裁判所や行政機関ではなく、独立した第三者機関が紛争解決をサポートすることで、より柔軟に解決を図ることを目的としています。
仲裁や調停、あっせん等を中立的な第三者が支援し、当事者間の合意形成を促す方法です。
ADRを利用する際の流れ
ADRを利用する場合、下記の流れで手続を行います。
スタート
│
▼
ADR機関の選定
│
▼
申立書の提出・手数料の支払い
│
▼
手続き準備
(当事者通知・資料提出・日時調整)
│
▼
手続きの開始
(調停・仲裁の進行)
│
├─→ 合意形成 → 合意書作成 → 実行 → 手続き終了
│
└─→ 仲裁裁定 → 裁定の実行 → 手続き終了
│
└─→ 不成立 → 他の手続き(裁判等)へ
│
▼
アフターフォロー
(合意履行の確認)
└─→ 必要に応じて再交渉・裁判
具体的な手続は選ぶ手段により異なりますが、基本構造は上記の通りです。
適切なADR機関を選定する際の注意点
適切なADR機関を選定する際、下記に注意しましょう。
- 紛争の種類
- 信頼性と実績
- 手続の柔軟性
- かかる費用
- 地域性とアクセス
- 手続にかかる時間
- 法的拘束力
- フォローの有無
1.紛争の種類
自分が困っている紛争が特定の分野に関する場合、その分野に特化したADR機関を選ぶ必要があります。
下記は紛争の種類ごとの例です。
紛争の種類 | 相談窓口 |
---|---|
商業・企業間 | ・日本商事仲裁協会(JCAB) ・国際商業会議所(ICC)仲裁機関 |
消費者問題 | ・消費者庁 ・日本消費者協会(JCA) ・日本消費生活センター |
労働紛争 | ・労働審判手続(裁判所) ・労働審判員連絡協議会 ・総合労働相談コーナー ・日本労働組合総連合会(連合) |
家族問題 | ・家事調停(裁判所) ・ADRポータルサイト ・遺産分割調停(裁判所) |
不動産関連 | ・日本不動産仲裁機構(不動産ADRセンター) ・不動産適正取引推進機構 |
金融・消費者金融 | ・金融ADR(指定紛争解決機関一覧) |
環境問題・行政関連 | ・公害等調整委員会(総務省) ・各自治体窓口 |
医療過誤・消費者医療問題 | ・医療ADR(日本弁護士連合会) |
2.信頼性と実績
ADR機関を選定する際は、各機関の信頼性を評価し、過去の実績や評判を確認することをオススメします。
具体的には、下記を確認すると良いでしょう。
評価項目 | 確認のポイント |
---|---|
運営歴など | ・設立年数 ・公的機関、業界団体からの支援 ・設立目的と経緯 |
専門家の資格・経歴 | ・調停人・仲裁人の資格 ・過去の解決事例や経歴 など |
過去の実績 | ・解決件数 ・解決率 ・解決までの時間(迅速性)など |
透明性・中立性 | ・手続きの明確さ ・第三者監視の有無 ・業界団体や企業との関係 など |
第三者評価 | ・利用者のレビュー ・業界団体からの推奨 など |
サポート体制 | ・利用者向けのガイドライン ・相談窓口の対応 ・プロセス説明のわかりやすさ など |
3.手続の柔軟性
ADRは裁判に比べて柔軟性が高い特徴がありますが、どの程度自由に手続が進められるかは選択肢により異なります。
自分の状況、希望に応じた手続が可能な選択ができるよう、事前に必要な手続を確認しましょう。
4.かかる費用
一般的にADR手続には、費用がかかる場合が多いです。
手続全体にかかる費用について、事前に確認しておくと安心です。
5.地域性とアクセス
利用を検討するADR機関の所在地とアクセスを確認しましょう。
ADR手続には、現地でなければ対応できない場合もありますし、場合により複数回通う必要があるため、アクセスが難しい機関の選択はオススメできません。
絶対に現地に赴かなければならないわけではなく、オンライン対応のADR機関もあるのでご安心ください。
6.手続にかかる時間
どのADR手続も裁判より早期解決を目指すものですが、手段の選択において、手続ごとにかかる時間を比較するのも一案です。
7.法的拘束力
選ぶ方法により、法的拘束力を持たない場合があります。
履行を確実にしたい場合、法的拘束力をもつ方法を選択するべきなのは言うまでもありませんよね。
8.フォローの有無
ADR機関の中には、当事者間で合意に至った内容が履行されたかの確認をしてくれたり、履行に関し、何らかの問題が生じた場合に支援してくれるものもあります。
また、ADR手続の途中で問題が生じた場合の相談先の有無も確認しておくと安心です。
ADRの種類、利用の流れ、注意点まとめ
当ページでは、ADRの種類と利用の流れ、注意点を解説しました。