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当ページでは、不動産を共有するリスクと対処法、注意点を解説します。
Contents
不動産の共有とは
不動産の共有とは、1つの土地や建物等の不動産について、所有者が複数いる状態を指します。
それぞれの所有者が持っている権利の割合を「共有持分」といい、共有者同士の合意や契約により持分は決まります。
共有が生じる原因
不動産が共有状態になる原因として、下記のケースが考えられます。
- 相続
- 共同購入
- 贈与または譲渡
1.相続
相続により共有不動産が発生する場合について、下記に分類することができます。
遺言による指定 | 被相続人が遺言により、不動産を複数の相続人に相続させると指定していた場合、相続開始と同時に共有状態になる |
遺産分割協議による分割 | 被相続人が遺言を残さなかった場合、相続人全員による遺産分割協議において、相続人全員が不動産を共有することに合意することで共有状態になる |
法定相続割合に基づく相続 | 遺言がなく、遺産分割協議も行わず、法定相続割合に従って相続手続を行う場合、相続人が複数いると不動産が共有状態となる |
2.共同購入
共同購入とは、複数人が資金を出し合い不動産を購入することを指します。
具体的には、下記のケースが考えられます。
夫婦、パートナー | 夫婦で住宅を購入する場合、出資割合に応じて持分を設定 |
親子 | 住宅や賃貸不動産の購入に際し、親が多く負担する形で共同購入し、それぞれの持分を設定 相続を意識し、出資割合にかかわらず子の持分を多めに設定する場合もある |
友人、ビジネスパートナー | 不動産投資等を目的に、友人やパートナーと資金を出し合って不動産を購入し、出資割合に応じて持分を設定 |
3.贈与または譲渡
贈与や譲渡により不動産を共有するケースでは、相続や共同購入と異なり、所有権を意図的に分割することが多いです。
具体的には、下記の通りです。
親から子へ | 相続税対策を目的に、所有不動産の一部を親から子に贈与することがある |
持分の一部のみ | 不動産の所有者が資金調達を目的に、持分の一部を他人に譲渡することがある |
親族間で | 親族間で財産を分ける際、贈与ではなく譲渡として取引する場合がある |
不動産を共有するリスク
不動産を共有する場合、下記のリスクが考えられます。
- 意思決定が困難になる
- 管理費、修繕費の負担
- 単独利用に制限がかかる
- 共有者間で意見が対立する
- 共有者が増える
- 持分の第三者譲渡
- 強制的な共有解消
1.意思決定が困難になる
共有不動産について、変更や処分を行う場合、共有者全員の同意が必要です(民法 第251条)
また、管理行為を行う場合、持分割合の過半数がなければ行うことができないだけでなく、各共有者がもつ持分について、各自が自由に譲渡・処分することができます(民法 第252条第1項)
そのため、共有不動産に手を加える都度、他の共有者におうかがいを立てなければならず、迅速な意思決定が阻害される可能性があります。
特に、共有不動産を変更・処分したい場合は全員の同意が必要なため、ハードルが高いですよね。
2.管理費、修繕費の負担
共有不動産にかかる管理費や修繕費について、各共有者は持分に応じて負担します。
しかし、費用負担に関して意見が一致しない場合や、一部の共有者が支配を拒否する場合、トラブルに発展する可能性があります。
負担に関するトラブルは、共有者数が多いほど頻発傾向にあります。
3.単独利用に制限がかかる
原則、各共有者は共有不動産の全部について、自由に使用することができます(民法 第249条)
しかし、これが単独利用を意味するわけではなく、あくまで各共有者に不動産全体の使用権を認めるものです。
そのため、物理的に単独で占有・利用する場合、あらかじめ他の共有者に許可を得る必要があります。
使用方法によっては、他の共有者に損害が生じ、当該共有者から損害賠償を求められる可能性もあります。
4.共有者間で意見が対立する
共有不動産の管理方法や売却時期、利用方法について、共有者間で意見が分かれる場合があります。
具体的には、共有不動産を賃貸して収益を得たい、売却して現金化したいといった場合において、他の共有者から同意が得られず、不動産の有効活用が制限される可能性があります。
有効活用といっても、共有者それぞれが思う有効な活用法は異なるため、すれ違いのリスクは最後までついて回ります。
5.共有者が増える
共有者の一部が死亡した場合、相続により法定相続人の数だけ共有者が増える可能性があります。
共有者が増えると、更に意思決定が複雑化するだけでなく、持分の細分化により、共有不動産の資産価値が低下する恐れがあります。
当ページで解説しているリスクも、増えた人数分だけ高まることになります。
6.持分の第三者譲渡
共有不動産の持分は、他の共有者の同意なく譲渡することができます(民法 第251条)
これにより、元の所有者と新たな共有者の意見が同一とは限らず、意思決定が難航する可能性があります。
共有者間の信頼関係が築かれている場合、新たな所有者の出現を機に、均衡が崩れることもあり得ます。
7.強制的な共有解消
共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができます(民法 第254条)
そのため、自分は望んでいないにもかかわらず、共有物の強制的な分割または売却が行われるリスクがあります。
不動産が売却されれば、共有者は不動産を失うことになりますし、共有物分割請求に伴う手続には時間・費用がかかり、経済的な負担を負うこととなります。
共有不動産によるリスクへの対処法
共有不動産に伴うリスクを軽減するには、下記の対処法が考えられます。
- 共有契約書の作成
- 定期的なコミュニケーション
- 持分の整理
- 共同管理の体制づくり
- 共有物分割に関するルールの設定
- リスク管理のための保険加入
- トラブル発生時の早期対応
- 専門家の活用
1.共有契約書の作成
共有不動産につき、利用、管理、譲渡、修繕に関するルールを明確に定める方法です。
契約には、各共有者の権利義務、経費負担の分担、意思決定のプロセス等を含めることで、トラブルの未然防止が期待できます。
2.定期的なコミュニケーション
共有者間において、定期的に話し合いの場を設け、意見交換を行いましょう。
これにより、利用方法、管理に関する合意形成を促すことができ、意見の対立を解消しやすくなります。
3.持分の整理
他の共有者の持分を買い取る、または自分の持分を他の共有者に売却する方法もあります。
これにより、共有者の数を減らすことができ、意思決定の複雑化を回避することができます。
具体的には、下記の方法が考えられます。
持分の買取 | 買取資金を準備する必要があり、しっかりとした資金計画が必要 持分評価でもめる可能性があるため、不動産鑑定士等に依頼するのがオススメ | |
持分の売却 | 他の共有者 | ○売却者は持分と引換えに、今後の管理負担・トラブルから解放され、資金を得ることができる ×他の共有者が資金を確保できなければ、売却は困難 |
第三者 | ○売却者はすぐに現金を得ることができる ×新たな共有者が加わるため、元の共有者に不利な状況を招く可能性がある | |
持分放棄 | 【概要】持分を無償で放棄し、他の共有者の持分が増加させる ○放棄者は、管理負担、リスクから解放され、複雑な手続がいらない ×他の共有者が放棄に同意しなければ、放棄が難しい場合があるほか、贈与税が発生する可能性がある | |
代償分割 | 【概要】他の共有者に金銭を支払い、持分を取得する方法 ○特定の共有者が不動産全体を所有する形になり、管理しやすくなる ×金銭支払いによる持分取得となるため、他の共有者との合意が不可欠 | |
共有物分割請求 | 【概要】共有者の1人が裁判所に共有物分割請求を申立て、強制的に分割する方法 ○合意が得られなくとも強制的な分割が実現できる ×裁判手続になるため、時間・費用がかかる ×不動産の売却が必要な場合、必ず希望価格で売れるとは限らず、損失が発生するリスクを伴う |
共有不動産の管理を法人に任せ、共有者全員が当該法人の株主となる方法もあります。
小規模な不動産の場合、法人の運営費が上回り、最終的に赤字となる可能性がある点に注意しましょう。
4.共同管理の体制づくり
共有不動産の管理者を選任し、共同管理の体制を整えるのも有効です。
具体的には、下記を検討しましょう。
管理者(代表者)の選任 | 共有者の中から1人または複数人の管理者を選任する方法と、第三者を選任する方法がある 管理者の任期、役割を明確に定め、定期的に管理者を交代することで適切な管理体制の維持が期待できる |
管理ルールの作成 | 不動産の利用、修繕、支出の承認に関するルールを文書化し、全ての共有者に共有 賃貸運用を考えている場合、賃貸契約に関するルール(賃料、管理者、賃貸借契約の更新・解除、収益の分配方法など)も作成 |
経費負担のルール | 固定資産税、修繕費等の経費について、事前に分担割合を定める 定期的に経費を精算し、負担金を確認するための方法も定めておくと○ |
意思決定のプロセス | 重要な決定事項について、多数決または全員一致で決める等のルールを定める 重要な会議、決定事項では議事録を作成し、全ての共有者に確認することで後のトラブル防止が期待できる |
情報共有システムの構築 | 連絡先リスト、不動産の重要書類、支出記録をGoogle Drive、Dropbox等のデジタルフォルダに作成し、共有者全員がアクセスできるようにすると効率的 |
トラブル発生時の解決手段 | トラブル発生時に備え、弁護士、不動産コンサルタント等の専門家の連絡先を共有しておくと、問題発生時に支援を受けやすくなる 共有者で解決が難しい問題が発生した場合、ADRの利用も有効 |
5.共有物分割に関するルールの設定
教習者間において、あらかじめ共有物分割に関するルールを定めておくと、トラブル回避に有効です。
具体的には、下記を検討しましょう。
分割方法 | 下記いずれの方法により分別するかを決定 現物分割:不動産を物理的に分ける方法 換価分割:不動産を売却した代金を持分に応じて分配する方法 代償分割:特定の共有者が不動産全体を取得する代わりに、他の共有者には持分に応じた代償金を支払う方法 |
分割方法の文書化 | 分割方法、条件、手続に関する合意内容を「分割協議書」「合意書」として文書化 |
分割基準の明確化 | 不動産の価値について、どの時点の評価に基づき決定するかを明確化 不動産鑑定士の評価を利用する場合、支払金額について公平な基準を設定 |
分割時にかかる費用の負担割合 | 分割に伴う費用(登記、税金、不動産鑑定費用等)について、各共有者が負担する割合、支払い方法を決定 通常、持分割合に応じて分担することが多いが、全員が合意すると異なる割合での負担も可能 |
共有者が増加した場合の対策 | 共有者の1人が第三者に持分を譲渡した場合や、相続により共有者が増えた場合について、新たな共有者に既存のルールに従ってもらうことを確認する |
税務に関するルール | 分割方法により、譲渡所得税、贈与税、不動産取得税等の税金が発生する可能性があるため、事前に税理士に相談し、適切な対策を講ずるのがオススメ |
これらのルールは数年ごとに見直し、常に最新状況に更新するよう努めましょう。
6.リスク管理のための保険加入
共有不動産は複数人で所有するため、リスク発生時の影響が広がりやすく、保険によるカバーがリスク軽減に有効な場合があります。
具体的な保険の種類、メリット、注意点は下記の通りです。
メリット | 注意点 | |
---|---|---|
火災保険 | 火災、台風等による大規模損害でも、保険金で復旧費用を賄うことができる 家財、設備に対する損害も補償対象とするプランがあり、共有者全体の安心感向上につながる | 保険料の負担割合を決める必要がある 建物の利用形態に応じ、適切なプランを選ぶ必要がある |
地震保険 | 地震、津波、噴火等による損害をカバーでき、共有者全員の経済的リスク軽減につながる 建物の再建、修繕資金を確保でき、被災後の建物維持に有効 | 原則、火災保険に附帯する形で加入するため、単独での契約ができない |
家財保険 | 共有物として設置する設備、家具が火災や盗難により損害を受けた際に補償が受けられる | 共有不動産内において、家財所有者が複数いる場合、誰の家財が補償対象になるかを明確にしておく必要がある 特に高価な貴重品、家具がある場合、追加の保障契約を検討する |
賠償責任保険 | 第三者に対する賠償リスクに対応でき、共有者個人が大きな負担を負う必要がない 訴訟に発展した場合でも、保険による賠償金支払いが可能なため、共有者間でのトラブル防止に有効 | 補償対象となるリスク範囲が異なるため、事前の確認が必須 賠償金額の上限額があるため、状況に応じ、十分な補償内容を検討する |
団体保険 | 各共有者が個別に加入する場合に比べ、保険料が抑えられる場合が多いため、コスト軽減に有効 | 全員の合意が必要なため、加入時に各共有者の希望や意見をまとめる必要がある 保険の内容、補償範囲について、各共有者の理解が必要なため、事前確認を行う |
加入時や請求時に備え、代表者を決めておくと手続がスムーズです。
7.トラブル発生時の早期対応
共有不動産にトラブルが発生した場合、早期の対応が不可欠です。
下記に、早期対応の方法とポイントを解説します。
トラブル内容の正確な把握 | 問題の原因、状況を正確に把握する必要あり トラブル内容を証明できる証拠を集め、事実確認に専門的な知識が必要な場合には、不動産業者や弁護士等に相談 |
共有者全員による話し合い | 共有者全員の意見を確認し、トラブル解決に向けた共通理解の形成が重要 遠隔地に住む共有者がいる場合、オンラインを活用する 感情的にならず、建設的な意見交換がポイントで、話し合いや合意の内容は必ず文書化する |
リスク分担、役割の明確化 | トラブル発生時の役割分担を明確にしておくことで、担当者が窓口となり、他の共有者への連絡や対応を一元管理でき、円滑な解決が期待できる |
8.専門家の活用
共有不動産の相談先について、法律、税務、実務上の問題に応じ、下記を検討しましょう。
種別 | 相談できる内容 |
---|---|
弁護士 | 共有者間でのトラブル 持分譲渡、第三者への売却に関する手続き 共有物分割請求訴訟の対応 |
司法書士 | 持分の移転登記、名義変更 相続に伴う共有不動産の登記変更手続 不動産の権利関係に関する書類作成、証明書発行の代理 |
行政書士 | 共有者間の共有合意書、覚書の作成 賃貸借契約書、委任契約書等の書類作成 共有物の管理に関する規約、覚書の作成補助 |
税理士 | 共有不動産の売却に伴う譲渡所得税の計算、申告 相続税、贈与税に関する節税対策 不動産収益に対する所得税、確定申告に関する手続き |
不動産鑑定士 | 共有不動産の時価、価値の査定 相続、譲渡の際の価格評価 不動産の担保価値評価、競売時の評価 |
不動産コンサルタント、不動産業者 | 共有不動産の売却時における仲介、買い手探し 共有不動産の賃貸運用に関するアドバイス 共有者間における売却、譲渡の手続 |
地方自治体の無料相談窓口 | 法的トラブルの初期相談 税金、不動産評価に関する基本的な情報提供 |
家庭裁判所 | 共有物分割請求調停の申立て、その手続 調停不成立時の審判申立て 相続、持分譲渡に伴う共有者間の合意形成 |
不動産を共有するリスクと対処法、注意点まとめ
当ページでは、不動産を共有するリスクと対処法、注意点を解説しました。