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当ページでは、個人事業主が死亡した場合の相続手続、注意点を解説します。
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筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′) / 榊原行政書士事務所 代表行政書士 / 3級FP技能士 / やぎ座のO型 / 趣味は写真を撮ること、神社をめぐること
個人事業主が死亡した場合の選択肢
個人事業主が死亡した場合、相続人には、下記の選択肢があります。
- 個人事業を廃業する
- 個人事業を承継する
1.個人事業を廃業する場合
個人事業を廃業する場合、下記の手続が必要です。
書類・手続 | 申請先 | 期限 |
---|---|---|
個人事業主の死亡届出書 | 所轄の税務署 | 死亡後 速やかに |
個人事業の開業・廃業届出書 | 所轄の税務署 | 死亡日から1か月以内 |
事業廃止届出書 | 所轄の税務署 | 死亡日以降 速やかに |
所得税の青色申告の取りやめ届出書 (青色申告を選択していた場合) | 所轄の税務署 | 死亡した年の翌年3月15日まで |
給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出 ※個人事業の開業・廃業届出書を提出した場合は不要※ | 所轄の税務署 | 死亡日から1か月以内 |
2.個人事業を承継する場合
相続人が個人事業を承継する場合、下記の手続が必要です。
書類・手続 | 申請先 | 期限 |
---|---|---|
個人事業の開業・廃業届出書 | 所轄の税務署 | 死亡日から1か月以内 |
青色申告承認申請書 (被相続人が青色申告を選択していた場合) | 所轄の税務署 | 1月1日から8月31日までに死亡:死亡日から4か月以内 9月1日から10月31日までに死亡:死亡した年の12月31日まで 11月1日から12月31日までに死亡:死亡した年の翌年2月15日まで |
青色申告承認申請書 (被相続人が白色申告を選択していた場合) | 所轄の税務署 | 原則:申告する年の3月15日まで 例外:承継がその年の1月16日以後の場合、承継後2か月以内 |
青色専従者給与に関する届出・変更届出書 | 所轄の税務署 | 原則:青色事業専従者給与額を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで 例外:承継がその年の1月16日以後の場合、承継後2か月以内 |
給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出 ※個人事業の開業・廃業届出書を提出した場合は不要※ | 所轄の税務署 | 死亡日から1か月以内 |
消費税課税事業者届出書 | 所轄の税務署 | 初年度は課税免除となるため、消費税の手続は不要ですが、,還付を受けるには課税事業者でなければなりません インボイス等と併せ、検討されることをオススメします |
個人事業主の相続手続
個人事業主の場合、事業上の資産・負債は被相続人の財産であり、相続財産に含まれます。
事業用資産・負債とは、具体的に下記の財産を指します。
1.現金預貯金
公私問わず、死亡日を基準として、現金預貯金残高が相続財産となります。
屋号名義であっても、被相続人の遺産に含まれます。
2.事業用資産
事業用資産には、商品・材料・貯蔵品等の棚卸資産、機械・備品等の固定資産、著作権・ソフトウェア等の無形固定資産まで広く含まれます。
3.不動産
不動産について、被相続人名義の不動産は、事業用に使用していたかどうかに関わらず、相続財産に含まれます。
原則、評価方法は路線価方式です。
4.売掛金、未収入金
事業上で発生した売掛金・未収入金について、死亡日を基準に算定されるため、相続財産には含まれません。
このため、死亡後に入金される当該債権については注意が必要です。
売掛金は、権利を行使できることを知った時から5年、行使できる時から10年(民法 第166条)で事項にかかるため、早めに回収しましょう。
5.負債(債務)
事業上 発生した負債(債務)についても、死亡日を基準に相続財産に含みます。
死亡日に存在する買掛金、未払金等も相続財産の一部であり、債務として処理します。
6.その他
上記のほか、車両運搬具(自動車)、有価証券等もすべて相続財産に含まれます。
個人事業主の準確定申告
個人事業主が死亡した場合、死亡した年の1月1日から死亡日までの課税所得・所得税額を計算し、被相続人の代わりに「準確定申告」を行う必要があります。
準確定申告は、死亡日から4か月以内に行わなければならず、相続人が複数いる場合、相続人全員が共同して行う必要がある点に注意しましょう。
死亡した年の前年分について、確定申告を行っていない場合、準確定申告と併せて行う必要があります。
個人事業主の相続対策
個人事業主が生前にできる手段は、下記の通りです。
1.法人成り
個人事業の相続では、事業用資産と個人の資産が混同され、遺産分割が困難になったり、相続税の課税対象となる可能性があります。
これらを回避するためには、個人事業を法人化し、財産を明確に区分する方法が考えられます。
2.生前贈与
個人事業主の相続について、後継者が決まっている場合は生前贈与という選択肢もあります。
生前贈与には非課税枠が設けられているため、これらをうまく活用しながら、事業用資産を移転するのがオススメです。
3.遺言書を作成
個人事業主の相続について、相続人同士でもめる可能性がある場合、遺言書で備える方法があります。
どの資産を誰が、どのくらい承継するのか、各相続人の法定相続割合・遺留分等を勘案し、記載しましょう。
4.家族信託
個人事業主の相続について、家族信託という選択肢もあります。
家族信託では、生前に後継者と信託契約を結ぶ必要がありますが、契約内容は当事者間で事由に設定でき、生前から効力をもたせることも可能です。
相続だけでなく、生前における事業承継、認知症対策にも有効です。
5.事業承継税制
事業用資産を移転する際、後継者に負担がかかる場合があります。
これを防ぐには、事業承継税制の活用が考えられます。
ただし、事業承継税制を活用するには、満たすべき要件が複雑なうえに、一定の手続を継続して行う必要があるため、専門家(税理士)までご相談ください。
個人事業主が死亡した場合の相続手続、注意点まとめ
当ページでは、個人事業主の相続手続と注意点を解説しました。