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当ページでは、過払い金の発生条件、返還請求手続を解説します。
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筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′) / 榊原行政書士事務所 代表行政書士 / 3級FP技能士 / やぎ座のO型 / 趣味は写真を撮ること、神社をめぐること
過払い金とは
過払い金とは、法定上限率を超えた金利に基づいて支払った返済分を指します。
過払い金が発生した原因は、「利息制限法」「出資法」の規定にあります。
法律による金利差
平成22年(2010年)6月まで、利息制限法では年15.0%から20.0%、出資法では年29.2%を上限金利と定めていました。
利息制限法の上限20.0%を超える金利は「利息制限違法」ですが、出資法を適用すれば「合法」の矛盾が問題視されたことで、同年6月18日、改正貸金業法が施行されました。
改正貸金業法における上限金利は、年20.0%です。
ただし、返済期日を過ぎた場合の遅延損害金は、過払い金の対象外となる点に注意しましょう。
遅延損害金は「損害賠償金」に該当することが理由です。
過払い金返還請求の要件
過払い金について返還請求を行うには、下記の要件を満たす必要があります。
- 平成22年(2010年)6月以前に契約したこと
- 完済から10年を経過していないこと
1.平成22年(2010年)6月以前に契約したこと
出資法の改正は、平成22年6月18日です。
これより前に契約していなければ、過払い金の対象となる上限金利を超えた利率は適用されていないことになります。
平成19年(2007年)頃から、利息を年20.0%に訂正している消費者金融・クレジットカード会社もあるため、契約書等で適用利率を確認しましょう。
2.完済から10年を経過していないこと
既に完済している場合でも、完済日から10年以内であれば、過払い金返還請求の対象となる可能性があります。
過払い金返還請求の相手
返還請求の相手方は、不適切な金利設定をした金融機関です。
逆に言えば、適正な上限金利で運用していた金融機関については、時期要件を満たしたところで、過払い金の発生余地がありません。
このほか、奨学金、社会福祉協議会、住宅ローンで過払い金は発生しません。
要件を満たしても、返還請求ができない場合
過払い金について、返還請求の発生要件を満たしている場合であっても、借入先の金融機関が解散(倒産)している場合、請求することができません。
ただし、別会社に吸収され、別の会社として現存している場合は、請求可能です。
過払い金返還請求の注意点
現在、借入金を返済している人が過払い金返還請求を行った場合、「任意整理」として扱われます。
任意整理とは、債務整理の一種であり、事故情報として「ブラックリスト登録」される可能性があります。
ブラックリストに登録された場合、新たな借入だけでなく、クレジットカードの新規登録、スマートフォン等の機体について、分割払いでの購入ができなくなることもあるため、注意しましょう。
返還される過払い金は元本相殺され、残債務が減るメリットがあるだけでなく、「過払い金>元本」の関係なら完済となり、事故情報として登録される可能性は低くなります。
請求から返還までの流れ
過払い金返還請求から、実際に返還されるまでの流れは次の通りです。
- 取引履歴の照会
- 過払い金請求
- 返還手続
1.取引履歴の照会
対象となる貸金業者に対し、下記の方法にて、取引履歴の開示請求を行いましょう。
- 書面
- 電話
照会の理由を尋ねられることがありますが、「取引履歴の確認」と回答することをオススメします。
返還請求のためと回答した場合、相手方が身構え、手続が滞る可能性があるためです。
1-1.過払い金の算定方法
開示された内容から、最終取引日が10年以内であることを確認し、過払い金を算出します。
過払い金の計算には、利息計算ソフト または 手計算(Excel等を含む)による方法があります。
算定式は下記の通りです。
- 支払った利息=借入金額×金利×借入日数÷365日
- 利息制限法による正しい利息にて同様の計算を行う
- 両者を相殺する
1-2.利息制限法による金利
利息制限法による金利は、下記の通りです。
借入額 | 金利 |
---|---|
10万円未満 | 年20.0% |
10万円以上100万円未満 | 年18.0% |
100万円以上 | 年15.0% |
2.過払い金請求
過払い金の有無、金額が確定したら、下記のいずれかの方法で請求します。
- 任意交渉
- 裁判
2-1.任意交渉
任意交渉では、下記の書類を貸金業者に送付します。
- 過払い金返還請求書
- 過払い金計算書
内容証明郵便での送付をオススメします。
過払い金返還請求書には、下記の事項を記載します。
- 貸金業者の名称、代表者氏名
- 請求者の氏名、住所
- 請求者の電話番号
- 振込先として指定する金融機関、支店番号、種別、口座番号
- 契約番号 または 会員番号
- 過払い金額、返還請求する旨
請求書を受け取った貸金業者の担当者より連絡があるのが一般的で、電話等で交渉を行います。
この際、請求金額より低い金額で和解を求められることがありますが、全額返金を希望する場合は応じないようにしましょう。
ここで交渉がまとまると和解成立となり、合意書を作成しましょう。
反対に、交渉決裂、相手が応じない等の事情がある場合、裁判所に「過払い金返還請求訴訟」を提起することになります。
2-2.裁判(過払い金返還訴訟)
過払い金返還訴訟を行う場合、下記の書類が必要です。
- 訴状
- 利息制限法に基づく法定金利計算書
- 取引履歴書
- 過払い金返還請求書
- 商業登記簿、代表者事項証明書
過払い金返還訴訟で提出する訴状には、下記を記載します。
- 表題(訴状)
- 訴状の作成年月日
- 提出先の裁判所名
- 訴状提出者の氏名、押印
- 原告の住所、氏名、電話番号、書類の送達場所
- 被告の本店所在地、会社名、代表取締役の氏名
- 事件名(不当利得返還請求事件)
- 返還請求する過払い金額、金額に対応する収入印紙の金額
- 請求の趣旨
- 請求の原因
- 証拠方法、附属書類
「9.請求の趣旨」とは、訴訟で求めるものの趣旨を記載します。
「10.請求の原因」とは、過払い金返還請求の基礎となる原因を記載します。
- 原告と被告との間で金銭消費貸借契約が結ばれたこと、その内容
- 1について、利息制限法の利息上限を超えた利息等を返済したこと
- 2について、返済当時、被告が利息制限法の制限を超えていることを知っていたこと
裁判は月に1回程度の頻度で行われ、最低でも6か月前後はかかること、判決(または和解)から返還まで1か月から2か月程度の時間がかかります。
3.返還手続
過払い金の返還について合意に至れば、合意した返還期日までに、指定口座に過払い金が振り込まれます。
裁判上の和解、判決により請求が認められたのに、貸金業者が過払い金の返還を行わない場合、強制執行手続を行います。
過払い金返還請求を専門家に依頼する場合
過払い金返還請求を専門家に依頼する場合、報酬が発生します。
これにより、自分自身で請求するのと比較し、手元に戻る金額が少なくなる可能性があります。
ただし、専門家の請求・交渉により返還金額が高くなることがあり、総合的に見ると同額になることも少なくありません。
過払い金返還請求に対応できる専門家
過払い金返還請求に対応できる専門家は、弁護士、認定司法書士です。
弁護士の場合、特に制限はありませんが、認定司法書士の場合は、対象金額が140万円以下、簡易裁判所における訴訟においてのみ代理人を務めることができます。
どちらに依頼するか、また、どの弁護士または認定司法書士に依頼するかを検討する場合、報酬体系、サポート体制等を確認のうえ選ぶといいでしょう。
過払い金の発生要件、返還請求手続まとめ
当ページでは、過払い金が発生する条件と返還請求に必要な手続を解説しました。