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当ページでは、M&Aのメリット・デメリットを「買い手」「売り手」の視点から解説します。
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筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′)
榊原行政書士事務所 代表行政書士
やぎ座のO型。趣味は写真を撮ること、神社をめぐること。
M&Aとは
M&Aは、Mergers and Acquisitionsの略で、複数の企業が合併したり、他の企業を買収して1つの企業になることをいいます。
M&Aのメリット(買い手)
買い手にとって、M&Aには下記のメリットがあります。
- コストを抑えた事業拡大
- 節税対策
- 弱点克服
- 技術向上
- 事業の多角化
1.コストを抑えた事業拡大
新規事業を1から始める場合には、時間・手間・費用がかかるだけでなく、失敗することもあります。
これに対し、既に事業として成立している会社を買収(M&A)することで、時間・費用・手間をカットし、競合より1歩抜きん出た戦略を講じることができます。
お金で時間と手間、ノウハウを買うのがM&Aだといえます。
2.節税対策
売り手が繰越欠損金を抱えている場合、買い手はこれを承継することができます。
日本の場合、赤字発生から7年間は繰越可能なため、翌年に栗子荒れる赤字を黒字売上と相殺し、結果的に節税対策に繋がる場合があります。
3.弱点克服
自社のバリューチェーンを見直した際、特に弱い部分の補強目的でのM&Aが考えられます。
一般的に、弱点を克服するには、一定の時間と費用がかかるうえに、そもそも解決できる人材がいない等の問題が多く見られます。
このような場合、必要な事業を部分的に買収でき、迅速な改善が望めることもM&Aのメリットです。
4.技術向上
M&Aの対象には、人材、特許、ノウハウ等の技術力が含まれるため、研究開発をはじめ、技術力の向上が期待できるのもメリットだといえます。
自社と買収会社の技術を掛け合わせることで、新たな製品開発が可能となるだけでなく、既存商品の売上が伸びる可能性もあります。
5.事業の多角化
良くも悪くも会社の経営が安定している場合、更なる売上を目指すには異業種への進出が必要です。
新規事業を検討する業界において、既に高いポジションを獲得している企業を買収すれば、高いリスクを負わずに済みますよね。
M&Aのメリット(売り手)
売り手にとって、M&Aには次のメリットがあります。
- 後継者問題の解決
- 売却益の獲得
- 従業員の雇用維持
1.後継者問題の解決
令和6年(2024年)3月現在、多くの企業が後継者不足に頭を抱えています。
承継は「家族内承継」「社内承継」に大別できますが、前者の場合には子がいない、または、子に承継の意思がないこと、社内承継の場合、後継者は現在の経営者から株式を買い取る必要がある等、容易ではありません。
こうした企業がM&Aを実施することにより、悩みを解決できる可能性があります。
直近の業績が悪くとも売れる場合があるため、事業が継続できなくなる前の決断が吉な場合もあります。
2.売却益の獲得
M&Aで会社を売却する場合、まとまった資金を手に入れることができます。
非上場株式会社の場合、売り手と買い手とが直談判を行って金額を決定する場合が多いいっぽう、上場株式の場合は、株主の同意がなければ売却できない点に注意しましょう。
3.従業員の雇用維持
事業の存続が危うい会社がM&Aを活用する場合、ほとんどの場合、従業員の雇用は継続されます。
経営者が現役ならば問題ありませんが、高齢化や病気・障害等の状態にある場合、早めに対策を講じる必要があります。
M&Aの注意点(買い手)
M&Aを行う際は、下記の注意点を意識しましょう。
- 買収価格が高く回収が厳しい
- 偶発債務・簿外債務の承継リスク
- 許認可の承継ができない
- 買収企業の従業員が離職
- のれんの減損リスク
1.買収価格が高く回収が難しい
買収価額の算定時、対象となる企業を高く評価しすぎると、買収価格を回収できるほど売上が上がらない場合があります。
2.偶発債務・簿外債務の承継リスク
M&Aの実施後、売り手自身も気付いていない債務等が発覚する場合があります。
偶発債務は、債務保証、デリバティブ、手形割引、裏書譲渡等の債務をいい、売却時には予想できなかった債務を指します。
簿外債務は、貸借対照表等の計算書に計上されていない債務をいいます。従業員の未払残業代、賞与、退職引当金、リース債務、未払保険料等が含まれます。
これらの予防には、デューデリジェンス(買収監査)しかありません。
3.許認可の承継ができない
原則、M&Aによる企業買収時には、対象の会社が取得している許認可を承継することができません。
このため、新たに許認可を取得しなければ、特定の事業を行うことができません。
買収の前後期間、事業を止めることなく継続したい場合は、事前に確認し、必要な手続を行いましょう。
4.買収企業の従業員が離職
M&Aにより買収された企業の従業員は、買い手企業の一員として雇用が継続されるのが一般的です。
このとき、業務内容や労働環境の変化に不満を抱き、離職数r場合もあります。
特に重要な人材が離職するとなれば、M&Aによる効果は半減してしまうため、買い手は慎重に検討し、従業員と歩調を合わせる必要があります。
5.のれんの減損リスク
のれんとは、売り手の将来にわたる収益見込を買い手が評価したものをいい、貸借対照表上「無形固定資産」として計上します。
具体的には、下記をいいます。
- 知的財産(特許、商標、著作権等)
- ノウハウ
- ブランド力
- 販売ネットワーク
- 取引先、顧客リストなど
M&Aにおいて、買収価額と売り手の時価純資産額との差額をのれんとします。
M&Aの後、買収企業の収益力が低下すると、のれんの評価額を引き下げ、損失処理をしなくてはなりません。
減損処理の対象額が数億円にのぼる場合もあるため、適正な評価ができるよう努めましょう。
M&Aの注意点(売り手)
- 買い手が見つからない
- 売却後の労働条件悪化
- 企業の融合に時間がかかる
- 債権者、取引先からの反発
1.買い手が見つからない
全てのM&Aがうまくいくわけではありません。
自社が希望する時期、条件に合う買い手が見つからないことも多く、交渉にすら辿り着けないこともあります。
あらかじめ長期戦を覚悟しておくと、一喜一憂しなくて済みますよ。
2.売却後の労働条件悪化
M&Aによる企業統合において、従業員の雇用が継続されることは多いいっぽう、売却後の待遇が上がる事例ばかりではありません。
このような事実に面した従業員は、多かれ少なかれフラストレーションを感じることとなり、業務に支障がでることもあります。
こうした事例を予防するには、実施前の説明、個別面談等の検討が考えられます。
3.企業の融合に時間がかかる
一般的に、売り手が買い手企業のやり方に合わせていく必要があるため、社内に混乱が生じやすくなります。
特に、長年勤めてきた従業員は、新たな業務システムに馴染むのが難しく、M&Aに強いストレスを感じることもあります。
統合時に生じた亀裂が、思わぬところまで影響することもありますので、従業員等の意見には、よく耳をすませましょう。
4.債権者、取引先からの反発
M&Aを行う際、契約条件の変更、担当者の異動(離職等を含む)等により、取引先が反発する場合があります。
取引期間が長期にわたるほど、反発リスクは高まります。
M&Aのメリット、注意点まとめ
当ページでは、M&Aによるメリットと注意点を解説しました。