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当ページでは、遺産分割調停の流れ、費用、注意点を解説します。
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筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′)
榊原行政書士事務所 代表行政書士
やぎ座のO型。趣味は写真を撮ること、神社をめぐること。
調停とは
調停は、様々なトラブルにつき「調停機関」が間に入り、自主的な紛争解決を図る制度の事をいいます。
調停機関には、「調停委員会」「裁判官」が該当します。
裁判とほとんど同じメンバーで行われる上、各分野の専門家が調停員として参加するため、裁判より高い専門的な知見が期待できます。
主な家事調停
家事調停は、下記に分類されます。
1.遺産分割調停
遺産分割調停は、相続における遺産の分割方法、各相続人の相続割合を決める目的で行われます。
令和2年(2020年)の統計では、全国で1万件以上の遺産分割事件が取扱われており、決して他人事ではないことがわかります。
2.離婚(夫婦関係調整)調停
日本国内での離婚に関し、その10%は離婚調停による「調停離婚」に該当するといわれています。
夫婦関係について話し合いを重ね、決定した事項を「調停調書」に記載し、離婚が成立します。
3.婚姻・養育費分担(増額・減額)
子どものいる家庭では、離婚時に親権者を決定しなくてはなりません。
親権者は、子どもを監護する義務を負ういっぽうで、非親権者となる他方も扶養義務を負います。
この際に必要な養育費の金額を、調停の場で話し合うことになります。
このほか、離婚成立までにかかる婚姻生活費用が主題となることもあります。
婚姻非は、夫婦が婚姻生活を維持するために必要な費用
養育費は、子どもが自立するまでにかかる生活、教育、衣料、適度な娯楽等の費用をいいます
遺産分割調停を検討する場合
通常、相続手続は次の手順で行います。
- 法定相続人から相続人を確定
- 被相続人の財産調査
- 遺産の評価
- 各相続人に対する分割割合を確定
上記のうち、いずれかに問題が生じた場合に遺産分割調停を検討します。
1.法定相続人から相続人を確定
被相続人の出生から死亡までの連続する戸籍書類を取得し、法定相続人に該当する人を特定します。
被相続人に配偶者がいる場合は配偶者と、最先の順位に該当する法定相続人のみが、実際に相続する権利を持ちます。
順位 | 法定相続人 |
---|---|
1 | 子または孫等の直系卑属 |
2 | 父母または祖父母等の直系尊属 |
3 | 兄弟姉妹 |
相続発生時に死亡している法定相続人がいて、その人に子がいると場合には、本来の相続人に代わって相続できる場合があります(「代襲相続」といいます)
ただし、相続人に該当する人が相続放棄を行った場合、はじめから相続人ではなかった取扱いがなされ、代襲相続は発生しない点に注意しましょう。
2.被相続人の財産調査
被相続人の死亡時を基準に、財産調査を実施します。
遺産には、現金預貯金等のプラスだけでなく、負債・ローン等のマイナスも含め、不動産や有価証券等は、複数の選択肢から評価方法を選びます。
評価方法は、相続人の間で自由に決めることができるため、この段階でもめる場合があります。
3.遺産の評価
遺産の評価方法が決まり、全ての遺産について価額が確定したら、遺産分割協議に移ります。
4.各相続人に対する分割割合・方法を確定
遺産分割協議では、「だれが」「なにを」「どの割合で承継するか」を確定します。
対象物により、分割方法も含めて話し合うことになります。
遺産分割調停の流れ
遺産分割調停は、下記の流れで行います。
- 遺産分割調停の申立て
- 第1回期日の決定
- 期日に出頭、第1回調停の開催
- その後、複数回の調停を実施
- 成立すれば終了
1.遺産分割調停の申立
遺産分割調停の申立てを行います。
1-1.申立ができる人
申立てができるのは、下記に該当する人です。
- 相続人
- 包括受遺者
- 相続分譲受人
1-2.申立に必要な書類
遺産分割調停を申立てる際、次の書類を提出します。
書類名 | 備考 |
---|---|
遺産分割申立書(PDF) | |
申立書の写し | 相手方の人数分 |
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍全て (除籍謄本、改製原戸籍謄本等) | 原本 |
相続人全員の現在の戸籍謄本 | 3か月以内の原本 |
被相続人の住民票の除票 | 廃棄済みの場合、戸籍の附票の原本 |
相続人全員の住民票 | 3か月以内の原本 |
遺産目録 ・登記事項証明書(登記簿謄本) ・固定資産評価証明書 ・預貯金の残高証明書の写し ・株式の残高証明書の写し ・構図の写しに建物配置を書き込んだもの 又は 住宅地図 ・自動車の登録事項証明書の写し 又は 車検証の写し ・相続税申告書の写し ・遺言書の写し 等 | 「写し」とあるもの以外は 3か月以内の原本 |
上表は一般的な書類であり、各事案に対応する書類を求められますので、申立て先の家庭裁判所に確認しましょう。
1-3.申立にかかる費用
遺産分割調停を申立てる際、下記の費用がかかります。
内訳 | 金額 |
---|---|
収入印紙 | 被相続人1名に対し、1,200人 |
郵便切手 | 500円×2×当事者数、100円×2×当事者数 50円×2×当事者数 84円、10円を各20枚 2円、10円を各10枚 |
上表はあくまで一例なので、必要な郵便切手と組み合わせは、申立て先の家庭裁判所までご確認ください。
1-4.申立て先
遺産分割調停の申立て先は、下記のいずれかになります。
- 相続人のうち、1人の住所地を管轄する家庭裁判所
- 相続人の合意により決定した家庭裁判所
2.第1回期日の決定
申立を行うと、裁判所から第1回調停期日が通知されます。
3.期日に出頭し、第1回調停の開催
調停手続には、原則、本人が出頭します。
期日には、家事調停委員2名が当事者の話を聞き、裁判官と評議しながら進めることになります。
本人出頭が原則ですが、遠方に住む相続人には、電話等での参加も認められています。
裁判と異なり、調停は非公開で行われる上に、申立人と相手方(他の相続人)は別々の控え室において、調停委員と話をします。
このため、調停の相手方と顔を合わせることはほとんどありません。
4.複数回の調停
調停が1度で終わればそれに越したことはありませんが、複数回行われるのが一般的です。
都度、期日を決めて話し合いを重ね、概ね6か月から1年ほどで終了します。
5.成立すれば終了
当事者間の話し合いがまとまり、遺産分割が合意に至ると「調停成立」となります。
合意の内容は法的な効力をもつ「調停調書」に記載され、内容が実施されない場合、相手方はこの調停調書を根拠に強制執行を行うことができます。
いっぽう、話し合いがまとまらなかった場合には、審判へと場所を変え、争うことになります。
調停の場合、話し合いを大前提に解決を目指しますが、審判では、裁判官が最終的な決定を下す点で異なります。
遺産分割審判において示されるほとんどの決定は、「法定相続割合」に沿った分割割合となります。
遺産分割調停の流れ、費用、注意点まとめ
当ページでは、遺産分割調停の流れ、費用、注意点を解説しました。