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当ページでは、デジタル遺品の生前整理、相続方法を解説します。
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筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′)
榊原行政書士事務所 代表行政書士
やぎ座のO型。趣味は写真を撮ること、神社をめぐること。
デジタル遺品とは
デジタル遺品とは、パソコン、スマートフォン、タブレット等の電子機器をはじめ、端末内に保存される画像、音楽ファイル、ネットバンギング、サブスクサービス等のアカウントデータ等を指します。
目に見える有形物と違い、電子機器内のデータは見落とされることも多く、これらを規制する法律の整備も追いついていない部分があります。
こうした事情により、生前に整理ができずに亡くなると、相続時に思わぬトラブルに発展する場合があります。
被相続人のパソコンやスマホの取扱い
被相続人(死亡人)のパソコン、スマートフォン等の電子機器の所有権は、相続人に引き継がれます。
この際、PINコードがわからない場合も多いですが、一定数を超えたパスワードの誤入力は、内蔵データの自動削除に繋がる場合もありますので、注意しましょう。
デジタル遺品に関するトラブル事例
被相続人のデジタル遺品に関し、下記のトラブルが考えられます。
- PINコードのロックが解除できない
- サブスクリプションサービスが解約できない
- デバイス内の情報漏えい
1.PINコードのロックが解除できない
プライバシー保護のため、パソコン、スマホ等の電子機器にロック設定を施すのが一般的です。
解除には、顔や指紋等による生体認証、パスコード、パターン等を用いますが、設定された上限値を超えた誤入力は、ロックを厳戒化させたり、内蔵データの自動削除に繋がるおそれがあります。
1-1.携帯ショップでの処理
ロックの解除が儘ならず、携帯ショップに持ち込む方法も考えられますが、携帯ショップで解除してもらうことはできません。
各社共通の解除コードがありそうな気もしますが、原則、他者に知られないことを前提の機能なので、他人ではどうにもならない場合が多いです。
1-2.SIMを他の端末に入れ替える
同じSIM規格に対応する他の端末にSIMカードを入れ替え、データのみ取り出す方法が考えられます。
機種変更と同じ動作ですね。
この方法でアクセスできるデータもありますが、旧端末において、アプリ内で機種変更手続を行わなければならないもの、アカウント情報を入力し、ログインしなければならない場合が多いです。
1-3.パスワードのリセット
Windowsの場合、サインインに使用するPINを忘れても「サインインオプション」から別の方法でサインインできる場合があります。
PINコードの設定前に使用する初期値のほか、色々な方法が提示されます。
どうしてもわからない場合、パスワードのリセットという選択肢もあるため、ヒントになりそうな情報は全て集めておきましょう。
2.サブスクサービスが解約できない
現在、映画や音楽、ゲーム、電子書籍等をはじめ、広い分野でサブスクリプションサービスが提供されています。
被相続人がこうしたサービスを利用している場合、支払が滞ったことを理由に契約が解除されるわけではありません。
一般的に、サブスクサービスの解約には、「アカウント情報」「認証コード」を用います。
二段認証を使用する場合、登録した電話番号やメールアドレス宛てにワンタイムパスワードを送信する方法がとられますが、サブスクサービスの解約前に携帯電話会社との契約を解除してしまうと、この認証作業が困難となる場合があります。
被相続人のスマホを解約する場合、加入していたサービスの解約・変更手続を完了してから行いましょう。
2-1.キャッシュレス決済の残高等を引き継げる可能性がある
キャッシュレス決済の残高、各社が提供するポイントサービス、その他、被相続人が購入したコンテンツを承継できる場合があります。
承継の可否と必要な手続は、各社の「利用規約」を確認しましょう。
令和6年(2024年)3月現在、各社のポイントは相続税の課税対象とされていませんが、市場で現金に換価できる場合は対象となる可能性があるため、税務署までご相談ください。
3.デバイス内の情報漏えい
被相続人のデバイスに設定されたPINコードを無事に解除できた場合、アクセス権のある全てのデータを閲覧・複製・転送可能な状態になります。
パソコンやスマホには、写真・動画だけでなく、生前に取引のあった金融機関、クレジットカードや口座情報、社外秘の資料、その他、知人友人の連絡先等が含まれるのが一般的です。
他者に閲覧・悪用されるのを回避するには、生前からセキュリティ対策を講じておく必要があります。
また、端末を相続しないからといって不用意に廃棄した場合、第三者がこれを悪用することも考えられます。
小型家電リサイクル法等の規定を確認のうえ、正しく廃棄しましょう。
デジタル遺品の生前整理
総務省から発表された「令和2年版 情報通信白書」によると、情報通信機器の普及率のうち、モバイル端末の保有率は全体の96.1%でした。
このことから、デジタル遺品の相続トラブルは決して他人事ではないことがわかります。
1.契約サービス、口座情報の一覧化
相続手続において必要なのは、被相続人の契約情報と取引先です。
1-1.インターネット銀行、インターネット証券
インターネット銀行やインターネット証券では、紙の通帳等を発行しない上に、郵送物もほとんど届かないので、迷宮入りする可能性があります。
スマホ等のPINコード等は不要なので、ご安心ください。
あまり使用していない口座がある場合、思い切って解約するのもオススメです。
1-2.サブスクサービス
サブスクサービスの解約には、アカウント情報が必要です。
具体的には、契約先、ログインID、パスワードを記載しましょう。
インターネットで提供されるサブスクリプションサービスの多くは、アカウント情報と本人確認さえ取れれば解約可能です。
各サービスのカスタマーセンターに問合せ、必要な手続を行いましょう。
ログインIDとパスワードがわかるからといって、相続人が勝手にログインした上で操作を行うのは違法です。
必ず、カスタマーセンターに連絡しましょう。
2.日常的な断捨離
終活に限らず、普段から不要なデータは削除し、人目に触れさせたくないデータはロック設定を施しましょう。
「承継したい」「承継したくない」で区別し、フォルダ、保存方法を分けておくのがオススメです。
写真・動画の管理にクラウドサービスを利用している場合、相続人が自分のアカウントにログインできるとは限りません。
承継したいデータがあるのなら、各サービスの承継サービスを活用しましょう。
2-1.データ承継サービス
下記に、Googleのサービスをご紹介しますが、Apple等でも承継サービスがありますので、自分に合うものを活用しましょう。
Googleの「アカウント無効化管理ツール」の場合、あらかじめ期間と承継人を指定し、この期間内にGoogleサービスの利用がない場合、自動で承継サービスが発動します。
承継できるのは下記のデータです。
- Blogger
- 連絡先・サークル
- ドライブ
- Gmail
- Google+ プロフィール/ページ
- ストリーム
上記は詳記できますが、アカウントそのものを相続人が承継することはできない点に注意しましょう。
SNSの相続手続
被相続人のアカウントについて、被相続人自身が削除を希望する場合、遺言書等でログインに必要な情報を残しましょう。
被相続人が遺言書等を残していない場合、各プラットホームにより必要な手続が異なります。
Instagram、Facebook
Instagram、Facebookの場合、「削除」「追悼アカウントへの移行」いずれかを選択することができます。
参照:故人のFacebookアカウント手続、Instagramアカウント手続
手続には、下記の書類が必要です。
- 死亡診断書等、被相続人の死亡を証明する書類
- 申請者が近親者であることを証明する書類
- 被相続人または遺産管理に関し、正当な代理権があることを証明する書類
追悼アカウントへの移行すると、誰であってもログイン不可能となり、検索結果に当該アカウントは表示されることはなくなります。
ただし、既存の投稿・情報の閲覧は可能です。
X(旧Twitter)
令和6年(2024年)3月現在、Xにおいて、Instagram等の「追悼アカウント」に類似するサービスは提供されていません。
このため、こちらから死亡を報せ、当該アカウントの削除申請をすることになります。
削除をリクエストするには、下記の書類が必要です。
- リクエストを送信する人の身分証明書の写し
- 被相続人の死亡を確認できる書類
LINE
トークアプリのLINEでは、被相続人のアカウントについて削除以外の選択肢がありません。
故人のLINEアカウントの手続についてはこちらをご確認ください。
TikTok
令和6年(2024年)3月時点において、TikTok内に死亡人に関する規定は見当たりませんが、第三者による削除申請は可能なようです。
自分の死後、アカウント削除を希望する場合は、ログイン情報を残しておきましょう。
自分の死後を他人に任せられる「死後事務委任」
終活を前提にデジタル資産を整理する場合、死後事務委任契約がオススメです。
死後事務委任とは
死後事務委任契約とは、死後の事務手続を特定し、委任契約を結ぶ方法です。
契約なので、内容は自由に設計することができますが、下記に一例を挙げます。
- 葬儀、埋葬手続
- 医療費等の清算手続
- 友人知人等への連絡
- 各種サービスの解約手続
- 遺品整理等
死後事務委任契約を結ぶ相手に法的な制限はありませんが、正確かつ迅速な手続を希望される場合、弁護士、司法書士、行政書士等の専門家への依頼がオススメです。
遺言執行者も○
死後事務委任契約のほか、遺言書を作成する場合には「遺言執行者」の指定もオススメです。
遺言執行者は、遺言内容を実行する権限を持つ人をいい、遺言書の中でのみ指定することができます。
このほか「財産管理委任契約」等もありますが、デジタル遺品の処分に備えるのなら、死後事務委任契約をオススメします。
デジタル遺品の生前整理、相続方法まとめ
当ページでは、デジタル遺品の生前整理、相続方法について解説しました。