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当ページでは、被相続人(死亡人)の口座凍結のタイミング、凍結の理由、解除方法を解説します。
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筆者プロフィール
榊原 沙奈(90′)
榊原行政書士事務所 代表行政書士
やぎ座のO型。趣味は写真を撮ること、神社をめぐること。
口座凍結のタイミング
被相続人(死亡人)が保有する預貯金口座が凍結されるのは、金融機関が被相続人の死亡を把握したときです。
市区町村役所に「死亡届」を提出すると凍結されるとお考えの人もいますが、そんなことはありませんのでご安心ください。
口座凍結の理由
口座を凍結されるのは、下記の理由からです。
- 被相続人の財産保護
- 相続人同士のトラブル防止
1.被相続人の財産保護
被相続人の財産は、死亡時を基準に算定します。
このため、死亡後の自由な取引を許すと、帳簿価額と現実の価額に差異が生まれます。
このような事態を防ぎ、各相続人の権利を保護するため、金融機関は口座を凍結します。
2.相続人同士のトラブル防止
被相続人が遺言書を作成していない場合、原則、相続人全員による遺産分割協議が必要です。
遺産分割の大前提となる遺産は、被相続人の死亡時を基に算出するため、一部の相続人が勝手に引き出して消費してしまうと、事実上分割が不可能になることも。
いずれにせよ、相続人を守るための制度だといえます。
口座凍結の解除方法
1度凍結された預貯金口座は、下記の手順により解除するのが一般的です。
- 金融機関に申請
- 必要書類の収集
- 書類の提出
1.金融機関に申請
凍結された預貯金口座のある金融機関に、凍結解除の申出を行います。
金融機関から手順、必要書類を教示されますので、これに従いましょう。
遺言書がある場合、遺産分割協議が調った場合も同様に申出を行います。
2.必要書類の収集
一般的に、口座凍結の解除に必要な書類は、遺言書の有無により異なります。
2-1.遺言書がある場合
遺言書がある場合、下記の書類が必要です。
- 遺言書
- 検認調書または検認済証明書(検認が必要な場合)
- 被相続人の戸籍謄本・全部事項証明書または法定相続情報一覧図の写し
- 相続人代表者または遺言執行者の印鑑登録証明書
- 被相続人の通帳または証書、キャッシュカード等
2-2.遺言書がない場合
被相続人が遺言書を作成していない場合、原則、相続人全員による遺産分割協議が必要です。
上記、2と3は「法定相続情報一覧図の写し」で代替できる場合があります。
4について、発行から6か月以内等の期限を指定される場合が多いため、発行時期に注意しましょう。
3.書類の提出
必要書類が整ったら、金融機関の窓口に提出します(一部金融機関では、郵送で手続ができる場合もありますが、多くの金融機関では窓口申請を指定されます)
書類に不備がなければ、約2週間で手続が完了し、被相続人名義の口座から相続人または遺言執行者の口座に送金されます。
緊急で資金が必要な場合
口座が凍結された場合、原則、相続人確定まで解除されることはありません。
しかし、例外として下記の手段が考えられます。
- 仮払いの申立
- 預貯金の払戻制度
仮払いの申立
仮払制度は、遺産分割協議が調う前において、被相続人の口座から一定金額を引き出すことができる制度です。
仮払制度を利用して引き出せる金額は、下記のうち、いずれか低い金額を上限とします。
- 死亡時の預貯金残高×法定相続分×1/3
- 150万円
仮払いの申立に必要な書類
仮払制度を利用する場合、一般的には下記の書類が必要です。
- 被相続人の出生から死亡までの連続する戸籍謄本または法定相続情報一覧図の写し
- 相続人全員の戸籍謄本
- 払戻し希望者の印鑑登録証明書
上記はあくまで一例で、取引先の金融機関ごとに異なるため、事前に確認しましょう。
仮払制度による払戻し金は、遺産分割協議において調整対象になる場合があります。
また、相続放棄ができなくなる可能性もあるため、慎重に検討しましょう。
口座凍結前の対策
相続開始後、被相続人の口座が凍結されて困らないよう、下記の対策を講じましょう。
- 取引先の金融機関等を把握
- 信託契約を結ぶ
- 遺言書作成
- 必要資金の準備
1.取引先の金融機関等を把握
生前から、取引のある金融機関や通帳・印鑑の保管場所を共有しましょう。
ネットバンキング等に口座を保有している場合、紙媒体の預貯金通帳が交付されないため、ID・パスワード等を共有しておくと安心です。
ただし、共有されたID・パスワードを使用し、他者がログインすることは違法ですので、あくまでも問合せ時の口座照会にのみご利用ください。
2.信託契約を結ぶ
生前に被相続人と親族間で信託契約を結ぶと、生前から、信託の目的に沿った管理・運用を行うことができます。
信託契約には、目的、対象となる財産、託す相手、管理運用で得る収益を受ける人、契約の発効日等を定めることができ、認知症対策としても有効です。
3.遺言書作成
日本の相続は、死亡者の遺志を最大限尊重することを大前提に運用されており、有効な遺言書を作成することで様々な手続を省略することができます。
自身の財産を希望通り分割してもらえること、親族間のトラブル防止は、遺言者にとってもメリットだと言えます。
有効な遺言書を作成するには、正しい知識が必要です。
ご不安な場合は専門家までご相談ください。
4.必要資金の準備
相続開始後、最も困るのは葬儀費用や生活費です。
水道光熱費等の引落しに被相続人の口座を指定している場合、凍結前に変更しなければなりません。
いつ、何があっても困らないよう、必要資金は別に用意しておくと安心です。
保険で備える方法もありますが、生命保険の基礎控除額(500万円×法定相続人の数)に気を付けて下さいね。
凍結前の引き出しに関する注意点
「口座が凍結される前に引き出しておけばいいんじゃないの?」といった意見を見聞きすることがありますが、下記のリスクに注意しましょう。
- 相続放棄ができなくなる
- 相続人の間でトラブルになる
1.相続放棄ができなくなる
相続開始後、被相続人の財産を消費した場合、「法定単純承認」とみなされます。
「被相続人の財産を消費」に、預貯金の引き出しも含まれます。
法定単純承認とは、預貯金等のプラスだけでなく、負債・ローン等のマイナスの財産もすべて承継する事をいい、1度単純承認すると相続放棄を行うことはできません。
相続財産の全容が明らかでない状況で、不用意に遺産に手をつけるのは辞めましょう。
2.相続人の間でトラブルになる
被相続人が遺言書を用意していない場合、または、遺言書と異なる取り決めをする場合、相続人全員で遺産分割協議を行わなければなりません。
被相続人の預貯金は遺産分割の対象であり、分割が整うまでは「相続人全員のもの」という認識で話し合いは進みます。
相続人全員が同意していれば話は別ですが、そうでなければ、他の相続人から使い込み・別の財産の消費を疑われる可能性があります。
どうしても必要な場合は相続人全員に同意を得る、時間的な余裕がなければ誰が見ても消費先が明らかな証拠を残すよう心がけましょう。
口座凍結のタイミングと理由、解除方法まとめ
当ページでは、口座凍結のタイミングと理由、解除に必要な手続等を解説しました。