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不在者財産管理人が必要な場合と選任方法、注意点を解説

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当ページでは、不在者財産管理人が必要な場合と役割、選任方法、注意点を解説します。

不在者財産管理人とは

不在者財産管理人とは、所在がわからない・連絡が取れない人に代わり、当該不在者の財産を管理する人を指します。

(1)不在者とは

不在者とは、もとの住所または居所からいなくなり、すぐには戻る見込みがない人を指します。

不在者と同じく、一定期間行方がわからない場合に活用する「失踪宣告」と混同することもあるかもしれませんが、これらには明確な違いがある点に注意が必要です。

(2)不在者財産管理人と失踪宣告との違い

失踪宣告とは、不在者や生死不明者を死亡したとみなし、当人に関わる法律関係を確定させるための手続をいいます。

両者の違いを下記にまとめました。

不在者財産管理人失踪宣告
行方不明の期間無制限制限あり
普通失踪7年
特別失踪1年
申立てができる人不在者の配偶者
推定相続人
共同相続人
債権者
不動産の共有者
検察官など
不在者の配偶者
相続人
財産管理人
受遺者
生命保険金の受取人など
予納金必要
※事案により不要な場合もあります
不要
申立て後における本人の扱い行方不明のまま死亡

(3)不在者財産管理人が必要な場合

下記に該当する場合、不在者財産管理人が必要です。

  1. 遺産分割協議を行う場合
  2. 不在者の財産を処分したい場合
  3. 不在者の債務を回収する場合

ポイントは、本人でなければ対処できない手続かどうかなので、上記以外でも必要な場合があります。

(4)不在者財産管理人と相続財産清算人の違い

相続財産清算人とは、相続人がいない場合に相続財産を管理する人を指します。

具体的には、被相続人の相続人がわからない場合や、相続人が特定できているものの、全員が相続放棄を選択したことで、遺産を管理する人がいなくなった場合に選任します。

これに対し、不在者財産管理人の場合は、相続人の存在自体は特定できているものの、行方がわからない場合に選任する点で異なります。

要するに…
(1)不在者財産管理人は対象となる財産を一時的に保存・管理する人
(2)相続財産清算人は相続財産を処分する人
という風に、担う役割と目的が異なります。

不在者財産管理人を選任するメリット

不在者財産管理人を選任する最大のメリットは、原則、本人でなければ対処できない法律行為を進めることができる点です。

2人以上が絡む手続において、不在者が含まれることで全体の手続が滞るのは望ましくありませんが、不在者財産管理人を選任することで進めることができます。

不在者財産管理人を選任する際の注意点

不在者財産管理人を選任する場合、下記に注意しましょう。

  1. まとまった費用がかかる
  2. 候補者が選任されるとは限らない

不在者財産管理人を選任すると、
(1)管理人への報酬
(2)管理費用(予納金等)
が必要な場合があり、多いときには100万円程度を要する点には注意が必要です。

不在者財産管理人の選任方法

不在者財産管理人の選任について、下記の通りです。

1.申立先

不在者財産管理人の選任申立ては、不在者の従来の住所地または居所の家庭裁判所に行います。

2.申立てができる人

申立てができるのは、利害関係人、検察官に限られます。

(1)利害関係人に該当する人

具体的に、利害関係人とは下記の人を指します。

  1. 不在者の配偶者
  2. 推定相続人
  3. 共同相続人
  4. 債権者(担保権者など)
  5. 不動産の共有者 など

「不在者の財産の管理・保全について法律上の利害関係がある人」を利害関係人と呼ぶため、法的な根拠が証明できなければ申立てるのは困難だといえます。

3.不在者財産管理人になれる人

不在者財産管理人に就任するために、特別な資格は必要ありません。

しかし、選任の目的は「不在者の財産を適切に保存・管理すること」なので、これを達成することができ得る人が選任されることになります。

(1)候補者がいる場合

申立人が候補者を立てる場合、裁判所が適格性を判断することになります。

結果的に、候補者として挙げた人が選任されないこともあり得ますが、弁護士等の士業者を立てた場合には概ね認められます。

(2)候補者がいない場合

申立人が候補者を立てない場合、裁判所は、弁護士、司法書士等の第三者から不在者財産管理人を選任することになります。

また、候補者がいる場合であっても、不適格とされると同様の選任方法がとられる可能性があります。

4.必要書類

不在者財産管理人の選任申立てには、下記の書類が必要です。

  1. 申立書
  2. 不在者の戸籍謄本(全部事項証明書)
  3. 不在者の戸籍附票
  4. 財産管理人候補者の住民票又は戸籍附票
  5. 不在の事実を証する資料
  6. 不在者の財産に関する資料(不動産登記事項証明書,預貯金及び有価証券の残高が分かる書類(通帳写し,残高証明書等)等)
  7. 利害関係人からの申立ての場合,利害関係を証する資料(戸籍謄本(全部事項証明書),賃貸借契約書写し,金銭消費貸借契約書写し等)

(1)不在の事実を証する資料とは

不在者とは、これまでの住所・居所からいなくなり、容易に戻る見込みがない人を指すため、単に、連絡頻度が下がった又は連絡がつかないという理由だけで、直ちに不在者だと認められるわけではありません。

このため、申立て時には下記の手順で取得した「不在であることを裏付ける資料」を添付する必要があります。

  1. 不在者の戸籍謄本および戸籍附票を取得
  2. 戸籍附票に記載されている最後の住所地に書留郵便等を送付
  3. 送付した郵便物が「転居先不明」「宛所に尋ねあたりません」等の理由で返送されることを確認
  4. 現地に赴く場合、住所地周辺の表札を撮影、近所への聞き込み
  5. 不在者の近親者に所在を尋ねる
  6. 不在者の住所地を管轄する警察署に捜索願を提出する

これら全てを実行してもなお、不在者が発見できない場合に「不在者」と認められるため、すべて行ったことを記録しておく必要があります。

上記以外の捜索方法が考えられる場合、それらも全て実行しなければならない点に注意しましょう。

5.かかる費用

不在者財産管理人の選任手続には、下記の費用が必要です。

  1. 収入印紙800円分
  2. 郵便切手(連絡用)
  3. 予納金

郵便切手は、申立先の裁判所により金額と組み合わせが異なるため、事前に確認しておくと安心です。

(1)予納金

不在者財産管理人に係る予納金とは、財産管理に必要な費用を指します。

具体的には、不在者財産管理人の報酬や管理行為にかかる費用を指し、金額を決めるのは事件担当の裁判官です。

金額の目安は20万円~100万円程度といわれますが、原則、不在者の預貯金額から支出され、足りない部分を予納金で補うイメージです。

不在者の財産管理終了時において、余った予納金は申立人に返還されますが、残らない場合には返還されない点に注意しましょう。

不在者財産管理人が必要な場合と選任方法、注意点まとめ

当ページでは、不在者財産管理人の選任が必要な場合と選任方法、注意点を解説しました。

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榊原沙奈
(さかきばら さな)
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