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当ページでは、自分で遺産分割協議書を作成する際の書き方とポイント(注意点)を解説します。
筆者プロフィール
遺産分割協議書とは
遺産分割協議書は、遺産をだれが、どのように相続するかの話し合いが合意に至った際、その内容をまとめ、全員が納得(合意)したことを示すための書類です。
要は、言った言わないの水掛け論を防ぐための書類です。
遺産分割協議書の必要性
遺産分割協議書は、相続手続すべてに必要な書類ではありません。
そのため、相続ごとに「遺産分割協議書が必要かどうか」を見極める必要があります。
逆に言えば、遺言書通りの分け方をする場合や、法定相続人が1人の場合には、遺産分割協議書を作成する必要はありません。
遺産分割協議そのものは、口頭だけでも成立しますが、口約束だと後々のトラブルに繋がります。
相続人が2人以上いるのなら、不要なケースでも作成することをオススメします。
遺産分割協議書の提出先
遺産分割協議書が必要となる相続手続と、提出先は次の通りです。
遺産分割協議書の作成期限
遺産分割協議書そのものに作成期限はありませんが、相続税の申告は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内と期限が設定されています。
申告義務がある人は、この期限内に作成しましょう。
遺産に不動産が含まれる場合、相続登記義務化制度に伴い、不動産を相続したことを知ったときから3年以内、または義務化がはじまる令和6年(2024年)4月1日から3年以内のいずれか遅い方が期限となります。
遺産分割協議書作成に必要な書類
遺産分割協議書作成までの流れと必要書類は次の通りです。
- 法定相続人を確定
- 遺産を特定
- 相続人全員で遺産分割協議
- 協議の結果を遺産分割協議書に
1.法定相続人を確定
相続手続では、はじめに法定相続人を確定する必要があります。
法定相続人を確定するには、亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本を取得し、親族関係を確認することになります。
具体的には、いわゆる「隠し子」や異母または異父の兄弟姉妹がいないかを調べます。
2.遺産の特定
被相続人が生前に所有していた財産を調べ、相続財産(遺産)を特定します。
相続において、預貯金・不動産などプラスの財産だけではんく、ローンや債務などマイナスの財産も相続財産に含まれます。
調査の結果、プラスよりマイナスの方が大きいようなら、相続放棄または限定承認の申立てを検討されるといいでしょう。
相続放棄・限定承認の申立ては、相続開始を知った日から3ヶ月以内に行わなければなりませんので、やや急ぎましょう。
3.法定相続人全員で遺産分割協議
法定相続人と遺産が特定できたら、いよいよ話し合い(遺産分割協議)です。
遺産分割協議は、相続人全員で行う必要がありますが、実際に全員が集まって話し合いをする必要はありません。
遠方に住んでいる相続人や外出が難しい人がいる場合、書面を順番に送付して署名押印をしてもらう方法も考えられます。
4.協議の結果を遺産分割協議書に
話し合いで全員が合意した内容を、文書として遺産分割協議書にまとめます。
遺産分割協議書作成のポイント
次の通りです。
1.パソコンの使用OK
遺産分割協議書には、こうしなければならないという様式がありません。
パソコンやタブレットのワープロソフトを使用しても構いませんし、手書きでも構いません。
2.作成した年月日を記載
遺産分割協議書を作成した日付を記載しましょう。
3.誰が、どのくらい相続するのか明確に
遺産分割協議は、法定相続人全員が参加する必要があります。
このうち、誰がどの財産を取得するのかだけでなく、どれくらいの割合で相続するのかまで記載します。
4.生命保険金、死亡退職金は記載不要
生命保険金、死亡退職金は、遺産分割の対象外なので、記載不要です。
ただし、相続税の課税対象になりますので注意してください。
5.後出しの遺産の取扱いを記載
遺産分割協議の際にはなかった遺産が、後から見つかる場合もあります。
この場合、何の準備もしていなければ、改めて遺産分割協議を行うことになります。
後から見つかる遺産について、特定の相続人が全て引き継ぐ場合、あらかじめ下記の記載をしておくと手間が省けるのでオススメです。
もし決められないなら、相続人全員がその財産について、再度協議を行うと記載しておきましょう。
6.相続人全員が署名押印
遺産分割協議に参加する相続人全員が、協議書に署名押印をする必要があります。
押印に使用するのは「実印」でなければなりませんので、印鑑登録を行っていない相続人がいる場合、早めに登録しておきましょう。
7.複数のページにわたる際は契印を
遺産分割協議書が複数のページにわたる場合、全てのページに契印を押しましょう。
袋とじにする場合は、表裏のみで構いません。
8.人数分用意する
遺産分割協議書が完成したら、相続人全員分を用意します。
各相続人が各自保管し、それぞれの相続手続にて使用することになります。
遺産分割協議書 文例集
ここからは事案ごとに、筆者が実際に作成した遺産分割協議書を例にご紹介します。
1.不動産(戸建)
不動産のうち、戸建の場合は土地・建物とに区別し、登記簿謄本に記載されている通りに書きます。
所 在 東京都新宿区西新宿○丁目
地 番 ○番○
地 目 宅地
地 積 ○○○.○㎡
建物
所 在 東京都新宿区西新宿○丁目
家屋番号 ○番○
種 類 居宅
構 造 コンクリート○階建
床 面 積 1階○○○㎡ 2階○○○㎡
▽この部分を参照します
万が一、登記簿謄本と異なる記載がなされた場合、相続登記ができないこともあります。なるべく慎重に進めましょう。
2.不動産(マンション)
相続財産のうち、マンションまたはアパートなどがある場合、戸建と同様、登記簿謄本の情報を丸写しします。
所 在 横浜市○○町○番地○
構 造 鉄筋コンクリート造陸屋根○○階建
床面積 1階 ○○㎡
2階 ○○㎡
3階 ○○㎡…
専有部分の建物の表示
家屋番号 ○○町○番○の○
種 類 居宅
構 造 鉄筋コンクリート造り○階建
床 面 積 2階部分○○○㎡
敷地権の表示
所在及び地番 横浜市○○町○番○
地 目 宅地
地 積 ○○○㎡
敷地権の種類 所有権
敷地権の割合 ○○分の○○
3.預貯金
預貯金の場合、金融機関名、支店名、種別、口座番号、口座名義まで記載します。
○○銀行 ○○支店 種別(普通または当座) (被相続人氏名)
口座番号 ○○○○○○○のすべて
4.有価証券
有価証券の場合、証券会社名、支店名、口座番号、口座名義、商圏の種類等内訳を記載します。
○○証券 ○○支店 口座番号 ○○○○○○○ (被相続人氏名)
証券の種類 銘柄(銘柄コード:○○○○○○○) 数量○○口
証券の種類 銘柄(銘柄コード:○○○○○○○) 数量○○口
5.自動車
自動車の場合、自動車検査証(車検証)に書かれている情報を記載します。
ただし、査定額が100万円以下の場合、遺産分割協議成立申立書でもOKとされています。
自動車登録番号 横浜○○○ あ ○○○○ 車体番号XXXXー○○○○○○○
6.債務など
ローンなどの債務を相続する場合、契約内容、債務の残高、債務者を記載します。
- 相続人(相続人の氏名)は、被相続人名義の次の負債を承継する。
金銭消費貸借契約 金○○○○○○○円
債権者 (債権者氏名または会社名)
7.遺言書と異なる分割をする場合
被相続人の遺言書はあるものの、遺言書と異なる分割をする場合、下記のような記載をします。
必ず記載しなければならないものではありませんが、故人の遺志を尊重し、配慮する意味でも、記載するのが望ましいと考え、筆者は記載するようにしています。
8.未成年者がいる場合
相続人の中に、単独で法律行為ができない人(未成年者や成年被後見人など)がいる場合、家庭裁判所が選任する特別代理人が遺産分割協議に参加します。
この場合、法定相続人の代わりに特別代理人が署名押印を行うことになります。
自分で遺産分割協議書を作成する際の書き方とポイント まとめ
当ページでは、自分で遺産分割協議書を作成する場合の書き方とポイントをご紹介しました。